大したことではないんですが、僕がどうしても違和感を感じてしまうことがあります。それは「クリエイター」という呼称のことです。
どういうわけか、広告業界にはクリエイターと呼ばれる人がたくさんいて、さらには広告の成果物のことをクリエイティブと呼んだりもするようですが、僕はこれにはどうしても馴染めません。違和感を感じる、というか、むしろ嫌悪感すら感じるほど。広告の効果は下降の一途だと聞いていますが、それにしては偉そう過ぎるだろう、と。
クリエイトが意味するところが、文字通りの創造、つまり無から有を生じさせることだとしたら、僕は、人がそんな能力を持っていると考えること自体、傲慢以外の何でもないんじゃないかと思ってしまうのです。人は、もともと材料があって、それらを組み合わせることによって新しいものを生み出します。無から有を生じさせる、つまり創造(クリエイト)するわけではありません。オマケをつけるとか、編集するとか、演出するという言い方のほうがむしろ近い気がします。
事前に契約したクライアントのために、クライアントの予算を使って、クライアントの意向に沿ってものを作る人が、なぜクリエイターと呼ばれ、その成果物がクリエイティブと呼ばれるのか、本当に理解に苦しみます。ちなみにこれがWikipediaにおける定義。
普通に考えて、顧客の要望に応えて顧客の金で物を作る人というのは、職人でしょう。または技師。それがなぜ、創造主とか創作家とかになっちゃうのか、僕にはよく理解できません。まあ、人がそう呼ぶことについては、習慣ですしいいんじゃないかとは思います。しかし、自分のことをクリエイターであると名乗るためには、どれほどの傲慢さが必要になるのか、僕には想像もつきません。
毎月決まった給料をもらいながら、デザインやコピーライティングや映像制作をしているような人の名刺に、何々クリエイターなどと書いてあって「何々クリエイターの何某です」などと自己紹介された日には、対面しているこちらのほうがが赤面してしまいます。あげく、成果物のことをクリエイティブとか、自分で言うなと。
本来クリエイターと呼ぶに恥じない人というのは、誰にも雇われず、誰のためでもなく自己の表現のために作った作品を世に問い、得られた評価に応じた報酬を受け取る人なのではないか、と僕は思うわけです。ところが、Googleのスポンサーから「クリエーター」と検索すると、なんだか求人とか派遣の広告が続々ヒットします。これはつまり、雇われて案件をこなす会社員クリエイターとか派遣クリエイターとかの存在を示唆しているわけですよね。これって変じゃないですか?
あと、仕事柄かもしれませんが、最近は「Webクリエイター」という人にもよく出会います。職業訓練校のコース名や民間資格の名前にも使われていて、わりとメジャーな職種のようでもあります。しかしWebクリエイターってのもどうかと。
確かにごく一部には、Webを使って作品を世に問うて生きているような人も存在しますが、Webクリエイターとか書かれた名刺を持っている人はだいたい、自己表現のためではなく、クライアントのために働いている人たちです。それはクリエイターじゃなくて、デザイナーとかエンジニアとかいうんじゃないのかと。
まあ、職種をどんな呼称で表現しようと、ましてや自分で何と名乗ろうと、そんなものはそれぞれの勝手ではあると思いますし、そもそも僕自身が「SEOエンジニア」などという飛び切り恥ずかしい呼称を使用していたりもするわけで、他人様の職種の呼称のことなんて言えた義理ではないんですが、ともかく大半の「クリエイター」には違和感を感じてしまう、という話。オチはありません。