JB23ジムニーの剛性感をアップして乗り心地と操舵感を改善

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ジムニーはラバー製のマウントを介してラダーフレームの上にボディーが乗っているという構造から、フレームとボディーの位相差振動が生じ、ドライバーが感じる剛性感は非常に低いものになっています。この対処として、フレームとボディーをセミリジット化し、強化ボディーマウントを導入することで、剛性感とステアリングフィールを劇的に向上させました。

車体剛性と剛性感

歴代のジムニーは高強度なラダー構造フレームを採用しており、激しい不整地走行に耐えられる高い車体剛性を備えています。しかし、ラバー製のボディーマウントを介してラダーフレームにボディーが載っているという構造のために、ドライバーが感じる剛性「感」は非常に低く、その乗り味は軽自動車の中でも飛び抜けてチープです。

自動車の剛性感とは、ドライバーが感じる「しっかり感」や「安心感」のことで、剛性そのものではありません。剛性感はドライバーが感じ取るものですので、ステアリングやブレーキからのドライバーへのレスポンスや、加減速Gや旋回Gのかかりかた、車内に響く軋み音などが影響します。まとめると次のようになります。

  • ステアリングを操作したときの反応が鋭ければ剛性感は高く感じ、反応が鈍ければ剛性感は低く感じる。
  • ブレーキやステアリングの操作で荷重が移動したとき、揺り返しの量が小さければ剛性感を高く感じ、揺り返しが大きければ剛性感を低く感じる。
  • カーブやギャップを通過するとき、車室内に軋み音を初めとする低級音が響けば剛性感を低く感じ、低級音がなければ剛性感を高く感じる。

ふわふわ、ゆらゆらとしたジムニーの剛性感の低さは、ドライバーを疲れさせます。安定性が低いため緊張が続きますし、修正舵が多いため操作も忙しいからです。若い頃なら「ジムニーだしこんなものだ」で済ませられていたものが、ドライバーの加齢にともなってだんだんとつらくなってきます。

今回のブログ記事は、ドライバーの快適性の向上と疲労の軽減を狙って、JB23ジムニーの剛性感を向上させた記録です。フレームとボディーの接続を強化し、ふわふわ、ゆらゆらとした挙動をほぼ解消し、安定感と素直なステアリングフィールを得ると同時に、乗り心地を大きく改善します。またボディーの歪みを軽減し軋み音の発生を抑えます。

なお僕のJB23ジムニーの剛性感に関わるこれまでの仕様は、足回りはアピオ製45mmアップキットを装着して工藤自動車製ミラクルキャスターで補正しているほか、ランチョ製ステアリングダンパーを装着し、シートにはレカロSR-7を導入しています。レカロSR-7による運転姿勢の適正化と横Gを分散して支えることによる効果は非常に大きく、とてもおすすめです。

ラノーズBFスティフナー

剛性感の向上のために最初に導入したのはラノーズBFスティフナーです。このパーツは全8箇所のボディーマウントのうち中央部の4箇所をセミリジット化することで、ラバー製ボディーマウントの動きを抑制するというものです。このパーツを取り付けたのは現時点からさかのぼること7年前ですが、効果はかなりのもので、7年ほどはこのパーツだけで満足できていました。

ラノーズBFスティフナーは下の写真のように、金属板(現在はステンレス製とのことですが僕が購入した当時はアルミ製)を折り曲げ加工したパーツでフレームとボディーを接続するだけという簡易なもので、装着前には効果も耐久性も半信半疑でした。ところが効果は非常に高く、耐久性のほうも旧式のアルミ製を7年間使用して問題ありません。

BFスティフナーの効果ですが、ステアリングの反応が素直になり、不快な揺り戻しもかなり軽減されて、気持ちの良い乗り味になりました。路面のギャップを拾った際などの挙動も落ちついて「サスペンションやダンパーはいい仕事をしてるじゃないか」と、あらためてアピオの45mmアップキットを見直したほどです。

フレームとボディーをセミリジット化することから振動が大きくなることも懸念されましたが、細かい振動は心持ち増えたものの気になるほどではありません。取り付けも一人で30分もあれば完了するほど簡単で、価格は少し高いように思うものの非常に満足度が高く、剛性感を向上したい人には真っ先に薦める素晴らしいパーツです。

ショウワガレージ クイックボディーマウント

大満足していたラノーズBFスティフナーの装着から7年が経ち、ドライバーの加齢のせいか剛性感の低さが再び気になり始めたところで導入したのが、このショウワガレージ製クイックボディーマウントです。このパーツは、フレームとボディーを切り離すことなく交換できる片側のボディマウントだけを強化品に交換するというもの。

上の写真は純正ボディーマウントと強化ボディーマウントの比較で、左が純正、右が強化品です。強化ボディーマウントは純正よりも一回り太く、スリットがない形状で、見た目からしてしっかりしています。片側だけの交換とはいえ、これだけしっかりしたものに変わるなら効果は大きそうです。

取り付けは思ったより大変でした。ボディーマウントを固定するナットのうち、最前部の2箇所と最後部の2箇所は回り止めのナットが使われているようで、緩めるのも締めるのも非常に固く、特に最後部の2つは作業姿勢が悪かったことと工具を入れる隙間が狭かったこともあって非常に苦労しました。

最前部の2箇所は、フロントバンパーとライトカウルを脱着する必要があります。これはすでに何度か経験があったため特に苦労はしませんでしたが、初めての人なら少し手間取る可能性もあります。

また本来ならすぐ終わるはずの中央部の4箇所についても、ここには前述のラノーズBFスティフナーが装着されているため、作業量が2倍以上になってしまいました。8箇所すべて交換するのに6時間ほどかかったと思います。ひどい筋肉痛にもなりました。

効果のほうは、もともとBFスティフナーが装着してあったため劇的な改善とまではいかなかったものの、不快な揺り戻しがさらに減り、操舵感がより素直でシャープになりました。特に高速道路の車線変更のように大きな荷重がかかる場面での挙動が落ちついて、ジムニーならではの不安な挙動は解消しました。

ただし、このパーツについては良いことばかりではなく、車室内に伝わってくる振動やロードノイズはいくらか増えました。僕個人的にはまったく許容範囲内で、強化ボディーマウントで得られる高い剛性感からすれば何でもありませんが、人によっては乗り心地が悪化したと感じるかもしれません。

ノーブランド リアピラーバー

リアピラーバーとは、後部座席のシートベルト上部取り付け部を利用してボディーの左右をつなぐバーです。ハッチバック車のように車体後部に大きな開口部を持つモノコックボディーの車両では、リアピラーバーを装着することで車両後部の剛性が上がって、操舵感に好影響を与えるほどの効果があるのだそうです。

しかしジムニーのボディーはラダーフレームにラバーマウントされていますから、ボディーの後部の剛性を上げたところでモノコックボディーの車両のような効果は望めません。ただ、僕のジムニーはカーブの多い山道で調子に乗るとボディーが歪むようで、車室後部からギシギシと軋み音が出ていたので、その対策です。

結果は大成功で、完全とはいかなかったものの、高速道路や山道のカーブで軋み音が発生することはほとんどなくなりました。フレームの上に載っているだけのボディーとはいえ、歪みにくくなることで操舵性に好影響が出ることもうっすら期待していましたが、こちらは特に感知できませんでした。まあ当然でしょう。

以前フルデッドニング作業に合わせて軋み音や打音のような低級音をかなりしっかり退治したのですが、そのときに感じたことは「低級音が減るとドライバーが感じる剛性感が劇的に上がる」ことでした。ギシギシ、ミシミシ、カタカタ、パタパタ、といった音を車内から一掃すると、運転の安心感が増し疲労が減るのです。

内装が発する低級音は前回の作業で一掃できましたが、ボディーそのものが発する軋み音までは消せなかったため、今回ピラーバーを導入したというわけです。うまくいくかはやってみるまでわからなかったのですが、ノーブランドのピラーバーは安いパーツですし、駄目で元々の精神でやってみたのが奏功しました。

まとめ

ジムニーの剛性感を低く感じる理由は、フレームとボディーとの位相差振動です。フレームとボディーの位相差振動は、操舵時の荷重移動や、路面のギャップのような急な入力があったときに、不快な揺り戻しとしてドライバーに感知され、ドライバーは頼りなさや不安を感じます。これが剛性感の低さの正体です。

位相差振動は、フレームとボディーをつなぐボディーマウントの半分を強化品に変更し、ボディーマウントの半分をセミリジット化することで小さくできます。これでドライバーが感じる剛性感はグッと高まり、乗り心地が大きく向上、疲労も大きく軽減します。操舵性が素直になり、回頭性が高まる効果もあります。

一般的なモノコックボディーの車両は経年変化で車体剛性が落ちてきますので、同じ車にいつまでも乗り続けることはできません。その一方、ラダーフレームを採用するジムニーは古くなっても車体剛性が維持されるため、手入れさえしていれば何十年でも乗り続けることができます。80年代のジムニーがいまも普通に走っているのはこれが理由です。

僕のJB23ジムニーは2000年発売の3型ですので、すでに24年目で、外装には年式相応の劣化が見られるものの、車体や機関は良好ですし、カスタマイズの結果として操作感や剛性感や静粛性は新車のときを大きく上回っています。皆さんのジムニーもドライバーの経年変化に合わせてアップグレードしながら長く大切に乗ってくださいね。今回取り付けたパーツは次の通りです。