ブローオフバルブ交換とエアクリーナーボックス再装着

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TRUST Greddy Blow Of Valve TYPE FV装着写真

JB23ジムニーの純正リサーキュレーションバルブ(ブローオフバルブ)の劣化と、以前交換したキノコ型エアクリーナーの特性からくる不具合を解消するために、社外ブローオフバルブを導入し、純正エアクリーナーボックスと純正交換タイプのエアクリーナーエレメントを装着した記録。

作業前の状況

作業前の状態はキノコ型エアクリーナーとシリコンインテークホースの換装に詳しく書いてあるとおりですが、僕のJB23ジムニーの吸気系は従来、K&N製キノコ型エアクリーナー(RC-2960)と車種専用フィッティングパーツのセットと、WirusWinステンレス製サクションパイプを装着した仕様で、これはこれで気に入ってはいました。とりわけ、レーシーな吸気音は非常に気に入っていました。

キノコ型エアクリーナー装着時

キノコ型エアクリーナーについては、低速トルクの落ち込みや低速域でのレスポンスの低下がよく指摘されますが、それらの症状はあったものの致命的なものではなく、自作の強化アクチュエーターによるブーストアップとスズスポ製クロカンマフラーとの相性が良かったのでしょう、むしろ高回転時のパワーアップに大きな効果がありました。

問題点

大まかには気に入っていたとはいえ、キノコ型エアクリーナーは良いところばかりではありません。7年間も使っているうちに、だんだんと気になるところが出てきました。どれも致命的とは言いにくいことばかりですが、やはり改善したくはなります。感じていた問題点は以下の通りです。

  1. ブローオフをキノコ型エアクリーナーにリターンさせる配管では、リサーキュレーションバルブ(ブローオフバルブ)のリリーフ音が大気解放と変わらないほど大きく、そもそも当初から耳障りに感じていた
  2. 純正リサーキュレーションバルブの構造上、巡航時にわずかにアクセルを戻すような時にも反応してしまい、オナラのような不細工なリリーフ音が鳴るのが恥ずかしかった
  3. 吸気音やリサーキュレーションバルブの作動音が大きかったため、運転中の疲労感が大きく、長距離・長時間のドライブには適さなかった
  4. キノコ型エアクリーナーはエンジンルーム内の高温の影響をまともに受けるため、連続走行時や夏場の高温時において、パワーダウンが顕著だった
  5. 大雨の中を長時間走行すると、キノコ型エアクリーナーに装着した防水カバーが濡れてしまうなど、耐候性に問題があった
  6. 低速トルクがわずかに薄くなり、中高速ではパワーアップしたため、ただでさえピーキーなK6Aエンジンの出力特性がさらにピーキーになり、林道や雪道などスリッピーな路面では扱いにくさがあった
  7. 純正リサーキュレーションバルブが劣化してきたためか、高過給時に過給漏れが発生するようになり、シューという異音が発生するとともに過給圧が目に見えて下がるようになってきていた

細かな不具合があったにも関わらず面倒くさがって何も対処せずにきたのに、急に重い腰を上げたのは、上記の7番目の要因、純正リサーキュレーションバルブの劣化が疑われたためです。ともあれせっかくの作業ですから、上記の問題点のすべてを改善すべく、作業していきます。

純正エアクリーナーボックス再装着

リサーキュレーションバルブの作動音が大きすぎる問題、吸気が高温になる問題、出力特性がピーキーになる問題は、純正エアクリーナーボックスの再装着でクリアできるでしょう。エアクリーナーボックスを再装着することで解決できる問題点を以下にまとめます。

  • エアクリーナーボックスの消音効果が高いことで、リサーキュレーションバルブの作動音はほとんど聞こえなくなる
  • 吸入口が適正な位置に戻ることで吸気がエンジンルームの熱の影響を受けにくくなり、熱による出力低下が抑えられる
  • エアクリーナーボックスによって吸入抵抗が発生することで、低速域では燃調の狂いが戻り、高回転域での出力は抑えられるため、マイルドな出力特性に戻る

純正エアクリーナーボックスを装着すれば、キノコ型のときのレーシーな吸気音は諦めるしかありません。しかしどうしても物足りなければ、純正エアクリーナーボックスの穴あけ加工などであとから対応することは可能です。この点については後の課題とします。

純正エアクリーナーボックス再装着

実際に純正エアクリーナーボックスを装着してみたのが上の写真です。音は完全に静かになり、吸気音はほとんど聞こえず、リサーキュレーションバルブの作動音もほぼ聞こえなくなりました。フルブーストから解放したときにだけリリーフ音がわずかに聞こえるという程度で、実に静かなものです。

高回転域での出力は低下しましたが、やはり中低速での扱いやすさが向上し、音が静かになったこともあって、運転時の疲労は非常に少なくなりました。好みの問題ですが、やはり僕には賑やかでピーキーなキノコ型エアクリーナーは合っていなかったようです。

純正交換型の高効率エアクリーナーの使用

次に吸入効率の悪化の問題です。純正エアクリーナーボックスを装着すると、吸入効率の悪化は避けられません。これまでせっかく得られていた高回転時の出力はどうしても低下してしまいます。しかしそれもある程度であれば、吸気効率の良い純正交換型エアクリーナーエレメントを使用することで回避できるでしょう。

エアクリーナーエレメントには、K&N リプレイスメントエアフィルター(品番 33-2826)を選択しました。従来のキノコ型がK&N製だったため、メンテナンスキット(ウォッシャー & エアゾールオイル セット)をすでに所持していたというのが最大の理由ですが、他にも次のような理由が挙げられます。

  • 信頼性。世界中のたくさんの二輪・四輪のエアフィルターとして使用され、圧倒的な実績がある
  • 音。純正交換タイプとはいえ、他社製品よりもわずかながら吸気音が聞こえやすい
  • 耐久性。メンテナンスキットを使用することにより、半永久的に使用し続けることができる
  • 性能。純正品との比較で全体的に性能が良いが、特にある程度汚れてきたときの性能が圧倒的

エアクリーナーエレメントをK&Nに交換したことで、低中速のレスポンスやトルクはそのままに、最大過給圧がノーマル比で0.1kPaほど上昇したため、出力も向上しました。

K&Nリプレイスメントエアフィルター装着後1年経過

上の写真は、K&Nリプレイスメントエアフィルターをまったくメンテナンスせずにおよそ1年間使用した状態です。かなり汚れてきていることが目視できますが、そのわりに性能の悪化はまったく感じられません。やはりK&Nの性能は素晴らしいものがあります。

純正エアクリーナーボックスの加工

純正エアクリーナーボックスは、エレメントの下側から上側に向かって吸気します。エアクリーナーボックスの下側には水抜き穴が設けられていて、エアクリーナーボックス内に少しくらい雨水が入り込んでも問題ありません。まして僕のジムニーはエアクリーナーエレメントは水に弱い紙製ではなく、K&Nの金属製です。

そこで、いかにも吸気の抵抗になっていそうな形状の吸気ダクト(通称「象の鼻」)を取り外し、代わりにファンネルを装着することにしました。下の画像は象の鼻を取り外したところです。フレッシュエアはエアクリーナーボックスの下方に開いた吸気口から入ってきて、その上部にあるエアクリーナーエレメントを通過し、さらに上にあるサクションパイプへと向かいます。

下の写真は吸入口にファンネルを装着したところです。ファンネルは90年代くらいに原付バイクいじりを嗜んでいた大人にはおなじみのキタコ製ビッグファンネルφ50です。専用部品のようにピッタリで、違和感がありません。

象鼻の撤去とファンネルの装着によって、耳を澄ませば聞こえる程度に吸気音が大きくなり、リサーキュレーションバルブの作動音も、小さいながら聞こえる、という程度になりました。結局エアクリーナーボックスの穴あけ加工などはせず、K&Nの純正交換タイプのエレメントと、象鼻の代わりにキタコファンネルという仕様で落ちつきました。

社外ブローオフバルブに交換

わずかにアクセルを戻すようなときにもリサーキュレーションバルブが解放してしまう問題と、高過給時にリサーキュレーションバルブが過給漏れを起こす問題については、純正リサーキュレーションバルブの構造上の問題でもあるため、新品に交換するだけでは根本的な解決にならなそうです。ここは社外品のブローオフバルブに交換することを検討します。

社外品に交換するのであれば、過給漏れが発生しないことはもちろんですが、確実な動作でブーストの立ち上がりを速くする、低過給状態での解放を抑える(アクセルを少しだけ戻すようなときに解放しない)といった機能が欲しいところです。とはいえこれらの機能は、メジャーなブランドのブローオフバルブでは当然のように備えています。

  • 高過給時に過給圧が漏れてしまわない構造になっている
  • 解放圧の設定が可能で、低過給時にはリリーフしないように設定できる
  • 車種専用のアタッチメントが販売されている
  • エアクリーナーへのリターンキットが販売されている
  • 販売価格が安い(できれば)

僕が選択の条件として検討したのは上記のようなものです。大気解放する場合など、ブローオフの解放音を楽しみたいといったニーズがある場合(わりと多いと思いますしそれも楽しいものです)ならば、音質や音量なども検討の条件に入るのでしょうが、僕の場合はそこは無視しています。結果として選択したのは、TRUST Greddy Blow Of Valve TYPE FVです。

TRUST Greddy Blow Of Valve TYPE FV装着写真

そもそもですが、JB23ジムニーに車種別フィッティングが用意されているブローオフバルブというのはそう多くなく、メジャーな製品では以下の2製品のみで、フィッティングも含めた実勢価格もほぼ同様です。

僕がTRUST TYPE FVを選択した理由は、製品名にもなっている独特のフローティングバルブ構造です。これによって、確実に素早く動作すること、低過給時の無駄なバルブの開閉が抑えられること、アクセルオフ後(解放後)にバルブが閉じるタイミングが早いこと、高過給時の漏れが発生しないこと、などが期待できます。

ただし上記のようなことはいずれも、メジャーなブランドの社外品ブローオフバルブであれば問題なくクリアできる種類のことであり、BLITZ VALVE VDを選択したところでそう大差ない(通常のジムニーの運転であれば違いを体感できない)レベルのものだと思います。最終的には好みと自己満足です。

TRUST Greddy Blow Of Valve TYPE FVエアクリーナーリターン配管

僕の場合、TRUST Greddy Blow Of Valve TYPE FVの単体を購入し、別途トライフォースカンパニー製の取り付けキットを使用して装着、さらに同社製のブローオフバルブリターンキットを使用してブローオフをエアクリーナーに戻しています。しかしこの記事を書きながら調べていたところ、これらの必要部品をすべてセットにしたオリジナル商品がKプロダクツから安価に販売されていることに気づきました。

僕と同じ仕様で装着を検討している方であれば、Kプロダクツによる上記製品がおすすめです。必要なものがすべてセットになっており、安価に導入することができます。

さて、社外ブローオフバルブに関して僕は従来、正直なところただの飾り(大気解放音を出すためのアクセサリー)くらいに思っていました。純正状態で最低限の機能を備えたリサーキュレーションバルブは装備されていますし、社外ブローオフバルブはセールスポイントとして解放音ばかりが強調されているため、音で選ぶチャラチャラしたパーツだと思っていたわけです。ところが実際に装着してみたところ、その認識は大きく変わりました。

まず気づいたことは、ここ2〜3年ほど、-0.5kPa程度まで上がってしまっていたアイドリング時の負圧が、新車のときと同じ-0.6kPaまで戻ったことです(下の写真)。どうやら従来の状態では、純正リサーキュレーションバルブの劣化によってアイドリング時に不調が出ていたようです。ただ、この不具合の解消だけであれば、社外ブローオフバルブでなくとも、純正の新品でも同じ効果が得られるでしょう。

アイドリング時の負圧が-0.6kPaまで戻った

社外品で良かったと思わされた最大のポイントは、フル過給時の過給圧が安定したことです。やはり純正のリサーキュレーションバルブでは過給の漏れが発生していたようで、僕のジムニーでいえば、最大過給圧(1.1kPa)に到達したあとは過給がだんだんと下がってきて、最終的には0.85kPa付近で安定していました。それがブローオフバルブ装着後は、0.95kPaほどでピタリと安定するようになりました。

また、ブーストの立ち上がりも一段と鋭くなりました。加えて、多少のセッティングが必要ではありましたが、低過給時の解放を抑えることにより、アクセルオンから少しだけアクセルを戻したときに発生してた不快なオナラ音(半解放音)も消えました。この音については従来から気になっていたので、社外ブローオフバルブで解消されて非常に満足です。

ついでにドレスアップ

従来付けていたWirusWinステンレス製サクションパイプは少し短く加工していたため、エアクリーナーボックスとうまくつながらなかったため、新たにナカミチ製のステンレスサクションパイプ 1〜3型用4型以降はこちら)を購入して装着しました。シリコンホース部分は赤色を選択し、ボンネット内に少しだけ統一感が出ました。

上の写真が現在のエンジンルームです。写真の下のほう、ラジエターのところの赤いものはスージースポーツ製ラジエータークーリングプレートです。純正では導風用にスポンジがついている場所ですが、スポンジは劣化してボロボロになっていた(皆さんのJB23もボロボロのはずです)ので装着しました。まあドレスアップです。

作業を終えて

最大出力という観点から見れば、今回の作業のうちエアクリーナー関連についてはデチューンにあたります。しかしそもそもジムニーという車の特性上、高回転で高出力を得ることよりも、むしろ中低速の扱いやすさを取り戻し運転を楽に快適にしたほうが、ずっと僕の好みに合います。音の問題にしても出力特性の問題にしても、結局はオーナードライバーの好みを反映するのがよいということでしょう。キノコ型エアクリーナーは僕の好みではありませんでした。

とりわけ音の問題は僕にとっては深刻でした。キノコ型エアクリーナーが奏でるレーシーな吸気音は気に入っていたものの、不用意に発生するリサーキュレーションバルブの作動音や、過給圧の漏れからくるシューという異音などが気になって、運転時の疲労がどうしても溜まってしまっていました。僕はバイク乗りでもあるため、やはり四輪に求めるものは、運転の楽しさよりは快適性のウエイトが大きいことを再認識しました。

また、エンジンルーム内の美観とリリース音を演出するためのドレスアップパーツに過ぎないと考えていた社外ブローオフバルブについても、実際に装着してみたところ予想外の性能向上があり、認識を改める結果になりました。これほどの性能向上があるなら、費用対効果の問題はあるにせよ、排気をエアクリーナーにリターンして消音しているような場合でも社外品に換装する価値は十分にあります。

ジムニーの吸気系のライトチューニングを検討している方がいましたら、僕のように遠回りすることなく、純正交換式のエアクリーナーエレメントと社外ブローオフバルブという組み合わせがおすすめです。車両本来の特性を変えることなく、メンテナンス性を悪化させることもなく、出力の向上と乗りやすさの向上を両立することができます。今回使用したパーツを以下にまとめます。

今回の作業で最高出力こそ低下したものの、ノーマルをはるかに超える扱いやすさと快適さを獲得し、ドライバーのコンディションも含めたトータルでの性能が大きく向上しました。ここ数年はバイクばかり乗って出番が少なくなってきていた僕のジムニーですが、これからは少しずつ出番が増えていきそうです。とても満足度の高い作業でした。