ブローバイガスの処理とオイルキャッチタンク

以前JB23ジムニーの吸気系の部品を交換したとき、インタークーラーとその配管(ターボインテークパイプ)の脱着を行ったのですが、その作業中ちょっと気になることがありました。インタークーラーやターボインテークパイプの内側に、ヌルヌルするほどの量のオイルが付着していたのです。

このオイルの正体は、クランクケース内からブローバイガスと一緒に出てきたオイルミスト(エンジンオイルが気化したもの)が冷えて液化したものか、またはブローバイの圧力で吹き上がったオイルそのものだと思われます。

そこで、このオイルを分離する目的で、オイルキャッチタンクを取り付けてみました。転倒時やブロー時のオイル漏れを防ぐという本来のオイルキャッチタンクの用途ではなく、ブローバイガスと液化したオイルを分離するオイルセパレーター(気液分離器)としての装着で、下の写真の銀色のタンクがその部品です。

ウインズワークス製 SUSオイルキャッチタンク

ブローバイガスとは

ブローバイガスというのは、本来はシリンダーとピストンの間からクランケース内へと漏れ出してくる未燃焼ガス(いわゆる生ガス)のことを指しますが、一般的には、その他にも水蒸気やオイルミストなども含めてブローバイガスと呼んでいます。

このブローバイガス、クランクケース内の圧力が高くなればなるほど出やすくなるので、小排気量車やシリンダー数の少ない車など、クランクケース容量の小さい車で特に出やすいほか、ターボチャージャーで加給している車は混合気がクランクケース内に吹き抜けやすいので、それはそれは派手に吹き上げてきます。

そして僕のJB23ジムニーに搭載しているK6Aエンジンは、小排気量で3気筒でターボです。もうブローバイまみれになる条件がすべて揃っているようなもの。そこで、今回はこのブローバイガスと一緒に上がってくるオイルの処理のために、オイルキャッチタンクを設置した、というわけです。

ブローバイガスの処理

ブローバイガスの処理は通常、ヘッドカバー上のブローバイ出口から出きたガスを、配管を通じて吸気側の配管内(ターボ車ならエアクリーナーとタービンの間のサクションパイプ)に戻し、シリンダー内で再び燃焼させることで生ガスを燃やしきり、さらに触媒で浄化することで環境負荷を低減するという方式(ブローバイ還元方式またはリターン方式)が一般的に採用されています。

JB23ジムニーのノーマルのブリーザーホースの配管は、ヘッドカバー上のブローバイ出口から出て、エンジンブロックに沿うような取り回しで、下り勾配をずっと維持したまま、エンジン右下のサクションパイプに接続されています。ブローバイガスをリターンさせて再燃焼させるという意味では、理想的な配管です。

しかしこのレイアウトの問題点は、吹き上がったブローバイガスにオイルが大量に混ざっていたとしても、そのすべてが重力に従って配管の中を降りていき、余すことなくサクションパイプへと流れ込んでしまうことです。

ここで流れ込んだオイルは、エアフロセンサー、タービン、インテークパイプ、ブローオフバルブ、インタークーラー、インジェクタ、スパークプラグ、シリンダヘッド、吸排気バルブなどに付着していってしまい、カーボンやスラッジとなって残ってしまいます。また、オイルを燃やせば排気管からは臭い白煙も出ます。こうしたことが機械にとっていいはずがありません。

ブローバイガスの大気解放は問題外

こういうとき昔の車であれば、環境負荷を無視してブローバイガスを大気解放してしまう(配管を車両下部で解放しオイルやガスを地面に放出する)という方法もあったのですが、最近(80年代後半以降)の自動車エンジンではそうはいきません。というのも、ブローバイガスを還元(リターン)していないと、車検に通らないというだけでなく、性能低下を引き起こす可能性もあるからです。

ブリーザーホースがサクションパイプに接続されているということは、吸気時の負圧を利用してクランクケース内のブローバイガスを強制的に吸気側に吸い込んでいるということでもあります。これは、クランクケース内を換気(ベンチレーション)してエンジンオイルの劣化を防いでいるとともに、クランクケース内の気圧を下げてピストンが下がる時の負荷を軽減する働きをしているということです。

このため、オイルキャッチタンクの装着にあたっては、ブローバイガスをきちんと回収しながら、ブローバイに含まれるオイルを分離できるように配管して装着する必要があります。

オイルキャッチタンクとオイルセパレーター

本来オイルキャッチタンクとは、競技車両が転倒やブローした時にコースにオイルをまき散らさないようにするために装着する部品で、それぞれの競技のレギュレーションで装着が義務づけられているほか、排気量ごとに最低容量も決められているという自動車競技用の部品です。

しかし一般車両においては上記用途ではなく、ブローバイガスとオイルを分離するセパレーター(気液分離器)として使われることがほとんどで、僕も場合もその用途で装着しました。この場合、自動車競技のレギュレーションは関係ないので、オイルキャッチタンクの容量はどんなものでも良くなります。

ただし、オイルセパレーター用途でオイルキャッチタンクを使おうとする場合、市販されているキャッチタンクのほとんどは機能面では物足りないものが多いので、選択は慎重に行う必要があります。本来のオイルキャッチタンクとしての使用を前提として作られたものは、オイルミストの液化を促進するような機能がついていないことがほとんどだからです。

オイルキャッチタンクの選択

ネット上の情報を検索してみたのですが、結論からいうと、望んでいる機能の付いたオイルキャッチタンクは2種類しか見つかりませんでした。次の2点です。

ウインズワークス製はインレットパイプがタンク下部まで伸び、アウトレットパイプはタンク上部についているという内部構造で、ブローバイガスが素通りしにくく液化しやすい構造になっています。オクヤマ製品は上記の構造に加えて、さらにセパレータとドレンボルトを備えています。

製品としての性能でいえばオクヤマ製のほうがよさそうですが、僕はウインズワークス製を選びました。理由は、車種専用フィッティングの配管レイアウトが気に入ったからです。下がその取り付け後の写真。

オイルキャッチタンクの配管

ウインズワークス製のJB23前期型専用フィッティングでは、タンクの取り付け位置がバルクヘッドの上部となっています。

このレイアウトでは、タンクの取り付け位置が高いため、ブローバイ出口からオイルキャッチタンクまでの配管が登り勾配になります。また、純正のブリーザーホースの配管よりもかなり長い配管になります。これらによって、吹き上げたオイル(オイルミストじゃなく液状のオイル)がオイルキャッチタンクまで流れ込むことが少くなる(重力でクランクケースに戻る)ことが期待できます。

僕のJB23ジムニーのK6Aエンジンはかなりの量のオイルを吹き上げる(ターボインテークパイプやインタークーラーの中がヌルヌルになるほどに)ので、純正に近い下り勾配の配管だと、すぐにオイルキャッチタンクが一杯になることが予想され、高い頻度でドレンを行わなければならなくなってしまい面倒です。この点、ウインズワークス製の配管は理想的です。

また、バルクヘッドにタッピングで取り付けること、そしてホースが長いことによって、エンジンの振動の影響を受けにくいのも魅力です。

取り付けと配管

取り付けはスペースも広く難しいことは何もありませんが、購入を検討している方のための注意点として、取り付けステーをバルクヘッドに固定する際にタッピングを使うので、よく使うハンドツールセットのほかに、センターポンチ電動ドライバードリル(屋外作業なら充電式が必須)と鉄工用ドリルビット(〜4mm程度)と切削油(僕はCRC-556で代用)が必要です。

配管については、ヘッドカバーのブリーザーホースの出口がインタークーラーの下に位置しているために、作業時にはインタークーラーを外す必要があります。ただ、インタークーラーの取り外しはインテークパイプ2本とボルト1本を外すだけですので、この作業も難しくもなければ面倒でもありません。作業後は下の写真のようになります。

ヘッドカバーからオイルキャッチタンクへの配管

オイルキャッチタンクからのリターン配管は、サクションパイプの下部に位置しており、何も取り外したりすることなく、単に純正の配管と交換するだけです。作業後の写真は下の通り。

オイルキャッチタンクからサクションパイプへの配管

以上でオイルキャッチタンク(オイルセパレーター用途)の選択から装着までが完了です。あとは定期的にオイルレベルゲージを確認し、不純物が溜まってきたら、家庭から出る廃油と同様の方法で処分するだけです。

付記

最近の自動車エンジンのブローバイ配管は、このエントリで説明したサクションパイプに還元してブローバイガスの処理をする配管のほかに、PCVバルブ(チェックバルブ)を介してクランクケース内とサージタンクをつないでいる配管もあります(JB23ジムニーのK6Aエンジンにもあります)が、これとターボインテークパイプやインタークーラーに付着するオイルはほぼ無関係なので、今回の作業および説明では無視しました。

PCVバルブを介してサージタンク(スロットルの手前)へとブローバイガスをリターンさせる経路は、サージタンク内が負圧の時(アイドリング時やスロットル開度の小さいとき)にだけ作動するもので、ブローバイを派手に吹き上げがちな高回転・高加給での使用時には、この経路ははPCVバルブ(逆止弁の働きをする)で遮断され、使用されないようになっています。つまり、この経路の配管からオイルを分離するのはあまり意味がないのです。