ウエストゲートアクチュエーター強化スプリング

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自作アクチュエーター強化スプリング

ターボ車のブーストアップの定番、ウエストゲートアクチュエーターのスプリング強化をDIYでやってみました(JB23ジムニー)。材料代は数百円とお手軽ながら、目が覚めるような出力向上が味わえます。特に、軽自動車のように通常走行でも過給圧をかける頻度の高い車両では、効果を実感できるシーンが多いのでおすすめです。

実際のブーストアップの効果

どんな感じになったのか、まずはブースト計の動画から。次の動画は加速時のもの。ピークで110kPa(1.12kgf/cm²)くらいまで上がっています。

次の動画は、低回転からスロットルをオンにして過給圧が立ち上がって安定する様子。95kPaあたりでぴたりと安定しています。

以前の状態(エアクリとマフラー交換のみ)から変化した数値はだいたい以下の通り。

  • 最大ブースト圧(高速道路の上り坂などで発生)が、従来の90kPa(0.92kgf/cm²)から115kPa(1.17kgf/cm²)に上昇
  • 常用回転数2000rpmから4000rpmでの最大ブースト圧が、従来の80kPa(0.82kgf/cm²)から110kPa(1.12kgf/cm²)に上昇

数値をぱっと見るとそんなに変わらないように思えるかもしれませんが、最大ブーストで3割程度、常用域では4割程度もブースト圧が上昇しています。この体感差はかなりのもの。別の車になったかのような感覚です。

ジムニーは軽自動車としては重量があり、負荷の大きな大径タイヤを装着していて、空力性能も低い車ですから、少しパワーアップしてあげるだけでもずいぶんと運転が楽になります。こういうとき、気軽にパワーアップできるターボ車はいいものです。

ブーストアップの仕組みと作業内容

ターボ車にはもともと、過給圧(ブースト圧)の過上昇を避けたり加給を安定させたりするための機構として、ウエストゲート(ほとんどはスイングバルブ式。ポルシェなど一部車種はポペットバルブ式)が付いており、それをアクチュエーターで制御しています。

スイングバルブ式のターボチャージャーでは、過給圧の上昇に応じてアクチュエーターのロッドが少しずつ押し出され、その押し出された量に応じてスイングバルブ(排気をタービンからバイパスするバルブ)を開いていくことで、過給圧を制御しています。

今回の改造は、そのウエストゲートアクチュエーターのロッドにスプリングを装着し、スイングバルブを閉じる方向に張っておくことで、アクチュエーターの動き(排気をタービンからバイパスさせる動き)を制限し、ノーマル状態よりも過給圧を高める、というものです。

自作アクチュエーター強化スプリング

上の写真はウエストゲートアクチュエーターにスプリングを追加した状態で、つまりこれが完成状態、今回やったことはたったこれだけです。使用したものは以下の通り。どれもDIYショップで買ってきたもので、全部合わせても500円未満です。ただし過給圧の調整のためにブースト計は必須です。

  • Uボルト用の楕円プレート(40円くらい)
  • ステンレス製ワイヤクリップ 4mm用(248円)
  • 引きバネ(3本入り157円)のうち一本を使用
    鋼硬線(SWC)製、線径1.2mm、外径10mm、自由長47.3㎜

強化スプリングによる過給圧の調整は、大ざっぱな調整はスプリングの固さ(堅いスプリングほど最大過給圧が上昇する)で行い、細かな調整はスプリングの張り(強く張るほど最大過給圧が上がる)で行います。熱くなる場所での調整になるのでセッティングは時間がかかりますが、ノーマルを強化するだけですので難しくはありません。

このやり方なら、全域でノーマルに上乗せしたような加給が得られ、扱いやすく安定した出力特性となります。これで街乗りもツーリングも楽々です。

ジムニーJB23@奈良県某所

低リスクで行えるブーストアップ

ブーストアップというと、タービンやエンジンのブローといったリスクを考えがちですが、この程度であればリスクはそう大きくありません。というのも、今回のこの改造では、メーカーの基準値を超えない範囲で調整を行っているからです。手持ちのサービスマニュアル(JB23ジムニーの1型から3型に対応)の記述によると、基準値その他は次の通りとなっています。

  • 過給圧の正常値: 69〜123kPa(0.7〜1.25kgf/cm²)
  • ブーストリミッター: 128kPa(1.30kgf/cm²)

今回の改造では、最大でも115kPa(1.17kgf/cm²)までしか加給しないように調整したので、上限基準値にはまだわずかにマージンを残しており、機械強度に余裕があることはもちろん、燃調などもノーマルECUで十分に制御できる範囲内です。万が一の場合には各種のリミッターも作動しますから、安全上も問題ありません。

ブーストアップをしようとするとき、その方法としてブーストコントローラーの装着(たいていはブーストリミッターもカットされる)を検討することも多いかと思いますが、タービンやインジェクタやキャタライザも同時に交換するのでなければ、安全面からもコスト面からも、ブーストコントローラーは不要だと個人的には思います。