運と幸運の違い

この種の、いわば教訓じみた寓話を扱った種類の本は、いいタイミングで読むことができれば、ある種の一服の清涼剤となることもありますが、説教臭さが鼻についてどうにも不愉快になることもあります。今日紹介するのは「Good Luck」(アレックス・ロビラ著)。この本を僕は僕あまり良いとは言えないタイミングで読んだのですが、それでも「幸運は誰でも自分の手で作り出すことができる」ということだけは、ある種の実感を伴って理解することができました。

Goog Luck魔術師の願いを聞いた二人の騎士が、遠い森に生える魔法のクローバーを探しに行く、という物語を通じて、筆者は「チャンスに備えて準備を整えることができれば、チャンスをものにできる」ということと、「運を天に任せて準備を怠る者は、チャンスをみすみす取り逃がす」ということを伝えようとします。

幸運というのは、努力の結果として、もともとそこに転がっていた幸運を拾い上げることであり、努力を怠れば偶然の産物である運さえも逃す、というこの本の主張は、僕にとっては実感を伴ってうなずくことのできるものでした。物語としては、主人公たちの行動がどこかで必ず読者の経験や心情とぴったり合うように作られていて、いかにもわざとらしい計算高い感じがします。はっきり言うと、あまり好きではありません。

しかし、僕自身の経験として、例えばSEOと出会い、それをモノにすることができたのも、SEOとの出会い以前にWebサイト制作の技術をそれなりに勉強し、すでにある程度の知識があったからこそ、偶然から出会ったSEOをすぐさま理解し、習得できたのだと思うのです。このような経験はやはり数多くあり、(この本の著者の思惑通りかもしれませんが)僕は、この本によって今まで自分にもたらされてきた幸運の意味を知り、これからも僕には幸運が舞い降り続けるだろうことを確信したのです。

残念だったのは、素直な気持ちで読み進めることができない精神状態の中でこの本に出会ったこと。もう少しマシな状態の時に出会っていれば、もう少し得るものは大きかったかもしれません。素直な気持ちで本を読める精神状態の人にはおすすめします。
Good Luck」(アレックス・ロビラ著)。