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表現者と「ウェブ進化論」

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる話題の「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる」(梅田望夫 著)をやっと読みました。買うだけ買って、パラパラめくってみて、「面白いし読みやすいけどオッサン向けの論説」という感想を持って(僕もオッサンだけど)、そのまま隅に追いやられていたのを、やっとちゃんと読んでみた、というわけです。内容的には、まさに僕たちが感じていることや考えていることを、鋭く、わかりやすく、論理的に語っている、という感想と、それから梅田さんの温かさと熱さというか、温度感のようなものを強く感じました。
なんだか、「発売から4週間で六刷。累計15万部突破。」だそうで、ただならぬものを感じますね。小林くんも同じ時期に読んだみたいだし。で、内容について僕としてもも少しは気になったところもありましたので、そこらへんについて僕の考えもあわせてまとめてみたいと思います。

僕が気になったのは「総表現社会で表現者は飯が食えるのか」というところです。梅田さんは、ブログがもたらす今後の総表現社会とも言うべき状況について、Adsenseが表現者に対して新しい富の分配システムをもたらしたといい、特に発展途上国の人々がAdsenseを使ってドル収入を得る場合、彼らの生活に及ぼすインパクトは天恵とも言うべきものであるといいます。しかし、生活コストの高い先進国においてはインパクトはそれほどでもなく、先進国の表現者が「飯を食う」方法は、しばらくは相変わらず既存メディアに依存し続ける、と言います。その根拠は、既存メディアでは、それにもとづく権威に表現者として認知されれば食っていけるという秩序がそれなりに確立していることを挙げます。ここには僕は大きな違和感を感じます。

これについて語る前に、まず、僕の立場を明確にしておきたいのですが、僕はSEOに関する著書を2冊持っており、そのうちの1冊は日本語で書かれた初めてのSEO書籍であり、そのような実績から雑誌に連載も持っています。この意味では、僕は梅田さんの言う"表現者として今「飯を食っている」人たち"に属しています。正直なところこれだけで飯が食えるわけではないのですが、「既存メディアの権威のもとで表現者として認められている」という意味では、つまり「既得権のある者」という文脈では、僕はこの"表現者として今「飯を食っている」人たち"に含めてもよいと思います。しかしその一方で、僕はネット上の活動による広告収入(梅田さんの言う「新しい富の分配システム」によってもたらされている)もそこそこ、というかこちらは飯を食うのに十分な額の収入があります。

そんな感じで微妙な僕の立ち位置ですが、ただ、ウェブに関するなにがしかの専門家であるという立場は確実に存在し、だからこそ、Adsenseであれ、アフィリエイトであれ、やってみるからにはそれなりの力を注いでいます。僕の気持ちとしては、ウェブに関するなにがしかの専門家として、やってみる限りは、それで「飯を食う」程度のことができなくて、何を偉そうなことが言えるか、という気持ちがあるわけです。もちろん、僕のケースでは、勤めに出ている人たちとは始めから環境が違います。Adsenseであれアフィリエイトであれ、それに本気で取り組むだけの時間を捻出できますし、やるからには「小遣い程度になればいい」というような気持ちではありません。なにがしかの専門家としてのプライドのようなものをかけて取り組むわけです。

この結果、僕がこの種の広告収入で得るお金は、2005年9月に既存のサイトにAdsenseを貼り付け、その当月にいきなり980ドル程度の報酬を得たところから始まり、その後のアフィリエイトへの参加などで報酬は増え続け、今では月間70万円程度に達し、今も増え続けています。この種の「富の分配システム」を活用し始めてから、わずか半年しか経っていませんが、このようなことは現実に可能であり、単に「飯が食えるか」という点で言えば、既存メディアで表現を行って報酬を得るよりも、ウェブ上の広告収入のほうが遙かに率がよいのです。

なんだか自慢げな感じになってしまって申し訳ないのですが、僕が言いたいのは、既存のメディアの権威に認められた表現者であっても、ウェブからの広告収入のほうがはるかに「食う」足しになる、ということです。もちろん、ベストセラー作家やそれに類する著名なライターなどは違うでしょう。しかし、ほとんどのライター(梅田さんも含め)はライターとしての仕事以外に本業があり、その経験を生かしてライターとしても働いているのであり、多くのライターが既存メディア上での表現だけでは食っていけてはいない現状を考えれば、先進国である日本においても、「新しい富の分配システム」は十分なインパクトを持っていると僕は思うのです。

実際のところは、既存の表現者たちは他に収入の途があるために、そのインパクトを積極的に活用していないだけだと、僕は思います。僕は自分自身で、ある程度本気になって実際に試してみて、その結果、ウェブ上での表現を収入に変え、それなりの自由な時間を作ることに成功しました。これがこの後の僕の知的生産にどのような影響を与えるかはわかりませんし、良いことなのか悪いことなのかも現時点では判断できませんが、おそらく表現者に関する現状は、梅田さんが考えている以上に激烈に変化しているのではないかと、僕は感じています。

なんとなく批判的な調子の文章になってしまいましたが、本の内容はたいへん素晴らしく「そりゃ変だろ」と思ったのは上記の「総表現社会で表現者は飯が食えるのか」というところだけでした。また、現在のウェブ上で起きているような、まさに複雑さを極める様々な現象について、ここまでわかりやすくまとめ、伝えきる梅田さんの力量には感服します。面白い本です。おすすめです。安いですし。

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