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観光地としての東京も本当は悪くないんだけどね

僕はほんの数年前まで千葉市に住んでいて、今は大阪府堺市に住んでいます。そんな僕にとっての東京というのは、今も昔も変わらず「仕事で行く場所」であって、嫌々ながら行き来する場所。東京とは僕にとって、日本中の働きバチや兵隊アリ(僕もその一匹ですが)が金の匂いに誘引されて集うコロニーのようなもので、いわば金の亡者がさまよう地獄のようなものなのです。まあ、用事があるから仕方なく行くけれど、用がなければ行きたくない場所、というのが僕にとっての東京。

そんな僕ですから、純粋に観光だけを目的として東京に出るなどということは、小学校(当時は千葉県在住)の校外学習以来、今まで一度もありません。あとはすべて仕事です。少し調べてみたら、この1年ちょっとの間にJR東海 エクスプレス予約で100回近くも東海道新幹線を予約していて、そのほとんどが大阪と東京の往復だということを知り、その訪問回数の多さにちょっとうんざりしたくらいです。できればそんなに行きたくない、というのが本音。

それでもしかし、千葉を離れて堺に引っ越してきてからは、少しずつ東京の魅力もわかるようになってきました。今では仕事で仕方なく上京すると、そのついでに簡単な観光も併せて行うようになってきて、少しは東京を楽しめるようになってきたのです。東京近郊に住んでいたときには見えなかった東京が、離れてみたら見えてきた、といったところでしょうか。

僕が仕事で訪れる場所というのは、大手町、銀座、赤坂、六本木、青山、渋谷、新宿、といった限られたエリアで、これらの場所はそれこそ、金の匂いが濃厚な、いかにも仕事、という感じの場所ばかりで、珍しくも有り難くもありませんし、わざわざこんなところでオフタイムを過ごそうとは間違っても思いません。しかし、そうしたところからちょっと他の場所に目を向ければ、都内にだってたくさん、オフタイムを過ごしたくなるような場所はあります。

と、こんなことを書いているのには理由があって、先日11月23日に秋葉原で開催されたRTCカンファレンス vol.28「ブログ限界論」のスポンサーがJR東海のトーキョー☆ブックマークで、僕は「関西在住のブロガー」という枠で招待されたんです(新幹線のチケットと一泊の宿泊を提供されました)。で、主題の「ブログ限界論」についてはあちこちで話題になって盛り上がった(この話題の全容についてはチミンモラスイ?さんの前編後編が詳しいです)んですが、残念ながらスポンサーたるトーキョー☆ブックマークについてはすごく寒くて、ちょっと書き残さずにはいられない、というわけなんです。

さてこのトーキョー☆ブックマークですが、基本的な商品構成は「東京大阪間の新幹線チケットと宿泊のセット」という一般的なフリープランのパッケージツアーで、内容のほうも非常にリーズナブルな魅力的なものになっています。ターゲットは大阪から東京に観光目的で出かける人たち(仕事の人向けにはすでにエクスプレス予約があります)というわけです。で、商品自体は素晴らしいんですが、売り方が残念なんですよ。残念すぎて、せっかくブロガーが集まるイベントを開催したのに、反応がほとんどないという・・・。

具体的には、ターゲットである大阪からの観光客に東京の魅力を伝えるために用意されている情報は東京ガイドおすすめ東京遊びのページにあり、これらのページでは東京の観光スポットをガイドしているのですが、そのスポットの選択はちょっとどうかと。大半が仕事で行くような場所ばっかりで、これがオフタイムを過ごしたくなるような場所か?という疑問が嫌でも湧き上がってきます。

そもそもですが、その行き先が国内であろうと海外であろうと、都市部であろうと郡部であろうと関係なく、観光や旅行というのは「その土地の色」を見聞することが楽しみなのであって、それ無しには成立しないのではないか、と僕は思います。つまり、東京に観光客を呼びたいのであれば「東京ならではの郷土色」をアピールする必要がある、と僕は思うのです。単に「人がいっぱいいる」とか「高層ビルがある」とか「何となくお洒落だ」なんていうのは、観光の目玉にはなり得ません。そんなのを珍しがるのは真性のオノボリサンだけでしょう。もっと「他の都市では味わうことのできない東京」を打ち出さなくては。

もちろんトーキョー☆ブックマークのターゲットの中心が「関西在住のF1層」に設定されている(つまりM2層である僕はターゲットではない)というのは理解できます。しかし、それにしたところで、関西の都市部在住のF1層がオフタイムを過ごす場所として、大阪よりもさらに仕事っぽい喧噪にあふれた場所を選ぶとは、僕にはとても思えません。都市部のF1層がオフタイムに求めるのは、日常を忘れられる時間や空間であり、それは決して、近代的な都市の風景ではないはずです。

紹介されている情報の中でも、とりわけ残念なのはおすすめ東京遊びです。これはテーマ別に東京のモデルコースを紹介するものなのですが、紹介されているのは、ちょっとした規模や雰囲気の違いこそあれ、全国の地方都市のどこでも代替できそうなものばかり。これでは「他の都市では味わうことのできない東京」は、さっぱり見えてきません。

もっとも、東京は全国の(場合によっては世界の)いろいろな「いいもの」が集まってきているせいで、本来の「東京のオリジナル」のようなものは廃れつつあるのかもしれません。年間で50回以上東京を訪れる僕でも、江戸弁を話す若者(年配者ならまだまだ現存しますが)など見たこともないくらいですから、東京の地元文化などというものは、押し寄せてくる田舎者の波に揉まれて衰退の一途を辿っているのでしょう。しかし、だからこそ「東京ならではのもの」は貴重なのです。

では、僕にとっての東京の楽しみはどんなことでしょうか。少なくとも「お洒落なカフェでランチ」とか「高級フレンチでディナー」とかみたいな、東京じゃなくてもできるようなことではありません。僕の場合ちょっと食べ物に偏ってますが、敢えて例示するなら、ゴマ油で揚げた黄色い衣がベッタリついた天ぷらや、豚ホルモンの「やきとん」や、濃い味で煮上げられた穴子などが、僕にとっての東京の楽しみです。なぜなら、それらこそが「東京でしか味わえないもの」だからです。

食べ物については、特に関西からの旅行者であれば、江戸前風の煮魚(濃色で強烈に甘辛い煮汁でサッと煮た濃い飴色のもの)や、江戸前風の天ぷら(ゴマ油で揚げた濃いキツネ色のボッテリした衣が特徴)などは食べたことがない人が大半だと思います。何しろ、煮魚や天ぷらは全国的に関西風の白っぽいものが主流で、東京に住んでいたって江戸前風のものを食べたことがないという人のほうが多いくらいでしょうから。実際、江戸前風の煮魚や天ぷらは東京(しかもその一部)でしか食べることができません。まさに東京ならではの味です。そして、関西人には見た目で敬遠されがちなそれらも、食べてみると案外おいしいんですよ。

そんな旅行者としての僕が知りたい情報は、「旨い深川丼を食わせる店はどこか」とか「旨いシャコの品川飯を食わせる店はどこか」など、言わば東京の郷土料理に該当するもので、他の地域にはまず見られない種類のものについての情報です。これらはネット上にも情報はほとんど無いんですよね。郷土料理の情報が乏しい旅行先なんて、旅行先としての東京はどうなっているんだろう、と思わずにいられませんが、そういうところでこそ、トーキョー☆ブックマークさんには頑張っていただきたいものです。

まあ、僕の話だと食べ物のことばかりでアレですが(でも僕はともかく関西人には食い倒れが多いのは本当)、食べ物だけではなくとも「他の都市では味わうことのできない東京」を見せる、というのは、他の都市からの観光客を集めるために必須の課題であるように思います。このまま、他の都市でも代替可能な情報ばかり掲載していたのでは、なんだか東京が魅力に乏しい都市のように見えてしまって残念です。

少なくとも、観光で東京を訪れる人ならば、郷土色あふれる東京が見たいと思うはずで、そうした期待に応えるのもツーリストの仕事であるはずです。キラリと光る伝統的な東京の魅力のようなものも、探せば結構あるものです。そうしたものこそ、観光客が求めるものなのではないかと僕は思いますし、観光客を呼び込みたいのであれば、ツーリストはそうした東京の魅力を伝えるべきです。でないと、東京はいつまで経っても「仕事で仕方なく行く」場所のままです。

将来のリニューアル時には、地方の都市在住者が喜んで出かけたくなるような「東京」を見せて欲しいとトーキョー☆ブックマークさんには期待します。なにしろ商品自体は素晴らしいんですから、あとは見せ方、売り方を頑張っていただきたいものです。

それと、東京を紹介してくれている特派員ブロガーの皆さんには、もっと郷土としてのオリジナリティの見える東京を紹介していただきたいものです。フレンチとかイタリアンとかっていうのは、東京由来のものじゃなくて、どこか外国のものだと多くの人が認識していると思います(僕もその一人です)。たまには、都内に多数ある演芸場(他の都市にはほとんど無い)にでも出向いて、安価に楽しく東京のお勉強をなさってみるのも悪くないかと思います。マトモなお国自慢の一つもできないようでは、お里が知れますよ。

とまあ、少々辛口な意見を述べてきましたが、最近ちょっと東京観光が面白くなってきた関西在住者の一人として、期待を込めて書いてみました。悪気は一切ありません。何かの参考になれば幸いに思います。それと、トーキョーブックマーク・プロジェクトの皆さん、過日はご招待いただきありがとうございました。おかげさまで東京観光について考えるいい機会になりました。

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