ここしばらく、Web制作会社や企業のWeb担当者さんたちを対象に講演する機会が数回あったのですが、そこで何度か同じ質問を受けました。それは、彼らWeb制作会社や企業のWeb担当者が、SEOを専門業者とパートナー契約を結んだ場合、SEO専門業者というのは「具体的には何をしてくれるのか?」といった質問です。SEO自体の認知度は十分に高まっているのに、その専門業者の仕事内容はというとまったく秘密になったままである、という現実があったわけです。秘密になっているというよりは、発注側が疑いをもっているということかもしれません。実際に、SEOの専門業者とはいっても何か特殊なことをするわけではないですし、施策内容は僕のサイトをはじめネット上の各所や書籍などで公開されている手法がほとんどで、いずれもありふれたものにすぎないのですが、質問者たちはそれでは納得しません。質問者たちの疑問の内容は以下のようなものです。
「特殊なことをするわけでもないのに事業が成り立つはずがない。SEO専門業者が存在するということは、それなりの何か特殊な技術なりフローなりがあるはずだ。それに対価を払っている会社があるということは、それは対価を払う価値のあるものに違いない」
いや、そう思っちゃう人がいるからSEO業者が成り立っているだけなんですよ。まさに思う壺というやつです。
実際にはSEO専門業者だって、Web制作会社の方々や、企業のWeb担当者の方々が、日頃やっておられることと同じことをするだけです。それが本当であることを証明するために、「SEOの10のステップ」を下にまとめてみました。SEO業者の仕事の中で余計なこと(専門用語を満載したプレゼンでクライアントを煙に巻くとか、成果が思わしくないことをアルゴリズムの変化のせいにしてクライアントを煙に巻くとかみたいなこと)はすべて省いてありますので、まともな施策というのはこれがすべてです。もちろん常にこれらのすべてを行うわけではなく、案件に合わせて施策内容を組み合わせて提案し、実装するなりコンサルするなりといったことをします。
SEOの10のステップ
- 1. とりあえず現状を分析する
- 施策前の時点でのアクセス解析結果を活用し、よく利用されているキーワードの抽出や、ランディングからの動線の分析などを行います。コンバージョンレートの高いキーワードとして現時点で顕著なものがないか、動線の不備による損失が起きていないか、といったことを調査します。また、主なキーワードで検索した際の自サイトや競合サイトのリザルトを確認したり、競合サイトがどんなキーワードを使って最適化しているのかを調査したりします。これらの分析結果は、後に行う「目標設定」や「シナリオ作成」に影響します。
- 2. サイト運営の目標設定を再確認する
- プロモーションの目的を再確認します。単に新規のトラフィック量を向上させることだけを目標とする場合から、特定キーワードでの露出の向上、被リンク数の増加、コンバート数やコンバージョンレートの向上、サイト滞在時間の増加、ページビューの増加、リピーターの増加などを含めて、複合的に設定されることもあります。
- 3. セールスシナリオやユーザー動線をデザインする
- ターゲットや動線を見直し、訪問からコンバートまでの誘導のシナリオを設計します。セリングに関するのさまざまな手法を検討し、コンバートまでの心理的変化や行動を促すシナリオを検討します。情報サイトやニュースサイトなどののように訪問者をコンバートさせることが目的でないサイトの場合には、ランディングページを起点に関連情報の閲覧へと誘導したり、再訪や紹介をしてもらうためのアイデアを検討します。
- 4. キーワードを選択する
- 検索結果に露出させたいページについて、コンテンツとターゲットユーザーがそのコンテンツを検索する際に利用しそうな検索キーワードを予測してリスト化します。テストとして検索連動型広告を使用したり、検索連動型広告の関連ツールを参考にしながら作業することもありますが、担当者のセンスが問われる作業でもあります。
- 5. ナビゲーションデザインを最適化する
- 通常、検索結果からの訪問者はサイト内の深い階層のページに直接アクセスしてきます。そのランディングページを起点に、関連するコンテンツの閲覧やコンバートまでの動線をスムーズに提供できるようにナビゲーションを最適化します。ここではシナリオ設計をもとに最適なナビゲーションをデザインし、必要があればサイトの構成にも手を加えます。
- 6. ランディングページを最適化・追加制作する
- SEOでは、サイト内のすべてのページがランディングページ(最初に着地するページ)として機能できるように、ナビゲーションを含めてすべてのページを最適化します。トラフィックを集めたいキーワードに対応する適切なランディングページが存在しない場合、それらのページを制作します。追加で制作されるランディングページは、そのサイトのセールスシナリオとそのページがキャッチアップするキーワードに応じて制作されるほか、事例集や用語集やFAQなどの形でまとまった数を制作することもあります。
- 7. ページを論理的に構造化する
- もともともページが論理構造を持たないものであった場合、文書を再編集し、階層化された見出しや段落の構造をHTMLレベルで実装します。必要に応じて、コピーライティングや文章そのものを手直しすることもあります。この作業はアクセシビリティの基礎的な要件でもあります。
- 8. ソースコードを最適化する
- シンプルなコードへと変換する作業です。ロボットへのアクセシビリティを確保する作業といってもいいでしょう。すべてのページがきちんと正確にインデックスされるようにするために行います。プレゼンテーションをすべて外部CSSに移行して文書構造と視覚表現を分離したり、Javascriptを外部ファイル化したり、複雑に入れ子になったマークアップを整理したり、といった地道な作業です。この作業はアクセシビリティの基礎的な要件でもあります。多くの場合、オーサリングツールやCMSのテンプレート機能を利用して行います。
- 9. コピーライティングやラベリングを見直す
- タイトルや見出しなどのコピー、リンクのラベルなどについて、検索キーワードを含めるように調整します。訴求力を高めるクリエイティビティと、キーワードを的確に含めていく能力が必要とされます。情報系サイトや保険・金融などの堅い業界のサイトでは比較的容易ですが、嗜好性の高い物販商品を扱っているサイトなどでは難易度が高くなります。
- 10. 被リンクをマネジメントする
- サイト外部からのリンクを増大させるために、さまざまな施策を行います。大手ディレクトリへの登録や、取引先や関連会社のサイトとの相互リンクのような基本的なことから、大がかりなところではサテライトサイトなどと呼ばれる外部サイトを制作し、被リンクを自作自演で増大させるような手法が採用されることもあります。また最近では、ブログやソーシャルブックマークなどのソーシャルメディアを活用した施策も行われるようになってきました。このあたりについてはエントリ「SMOの16のルール」を参考にしてください。
ということで、ここで紹介したことはすべて、Web制作会社の方々や、企業のWeb担当者の方々が、日頃やっておられることそのものです。付け加えていうなら、これらの施策を外部の業者に委託するのは、外部の業者がこうしたことにどれだけコミットメントできるのかといった問題や、スムーズな意思疎通ができるようになる程度までコミュニケーションを密にすることによる時間的コストの問題などを考えると、ほとんどの場合アウトソーシングのメリットよりもデメリットのほうが目立つように思います。こうしたことを踏まえて、SEOの施策は内部だけで行うようにするのが得策であると思うのです。何しろ、施策の大半は制作者か運営者でないとできないことばかりなんですから。
時には、アウトソーシングによって専門性とコスト削減を買うことであるかのように見えることもありますが、実際には、SEOをアウトソーシングすることによって、Web制作会社や企業のWeb担当者の余計な仕事(意味のない不毛な仕事)が増えた、などという話を聞くことも少なくありません。SEO専門業者との契約内容によっては、SEO業者はユーザーのためではなく検索エンジンのためにサイトを構築しようとしますから、その結果ビジュアルやコピーなどのクリエイティブ面を破壊してしまい、ユーザーには受け入れられないようなサイトが出来上がってしまうこともあり得ます。また、コンサルなどと称して、SEOの専門家としてWeb制作会社や企業のWeb担当者が作った企画書なり仕様書なりに目を通して、「あなたがたの施策方法は間違っていません」などというだけでも仕事が成り立つことさえあります。
実際のところ、5年くらい前までは、サーチエンジンの性能もお粗末なものだったので、スパマーが検索結果をハックするようなことはそう難しくなく、そうしたハックを知っている人たちは、サーチ経由で好きなだけトラフィックを集めることができました。またスパム行為に対するペナルティもシビアで、これを避けるための様々な情報が流通していました。しかし今はそんな時代じゃありません。サーチエンジンは賢くなり、スパム的なトリックのほとんどは通用しません。スパム的なトリックは単に無視され、よほど悪質なものでない限り、検索結果の順位には何ら影響を与えない(上昇にも下降にも影響しない)ようになっているのです。今や、まともなサイトを制作し、まともに運営することだけが、究極的かつ最高のSEOなのです。そして、それらはWeb制作会社や、企業のWeb担当者が行うべきものです。「まともなサイトを制作し、まともに運営すること」が最高のSEOであるなら、SEOの専門業者などというものが必要でしょうか? 残念ですが、必要なのはノウハウだけであって、業者は必要ないと僕は考えています。
また、現在SEO専門と名乗っている業者のほとんどが、AdWordsやOvertureのリスティング広告の販売代理店として生計を立てているという現実もまた、示唆に富んでいます。AdWordsやOvertureのようなリスティング広告は本来、広告の出稿者自身が広告にまつわるすべての作業(予算設定や、広告クリエイティブ制作や、ターゲット設定や、キーワード選定や、出稿期間の設定や、効果測定など)を自分でできるようにシステム化したことで、広告代理店業者とそのマージンを廃することに成功し、画期的な低予算で広告宣伝を可能にしたことによって、従来では広告出稿など夢のまた夢であった零細事業者を中心に爆発的に普及したものです。そのような性質の広告からわずかのマージンを得る事業というのは、ある意味すでに破綻してしまっているといっていいでしょう。ここにおいても、必要なのはノウハウなのであって、代理店は必要ないのです。
Web上でビジネスを展開する場合、SEOは依然として強力な武器です。巨大なトラフィックを得るための手法としてSMOのようなものが取り沙汰されることはありますが、そうはいっても、その一方で今もなおWeb検索からは大量のトラフィックがもたらされています。しかしそのためのSEOはすでに特殊なものではなく、Web制作会社や企業のWeb担当者の業務の一環なのであって、誰かが、例えばSEO専門業者と名乗る人々が独占的に取り扱うものではなくなっているのです。一言でまとめるなら、SEOは必要だが、SEO業者は不要であるといったところでしょう。
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