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情報の「良さ」を伝達するためのコピーライティング

商品やサービス自体は何も変わっていないのに、商品やサービスに関わる何かを変えたら急に売れるようになった、という話を耳にすることは少なくありません。例えば、以下のような話です。

  • 商品名・サービス名を変えたら急に売れるようになった
  • キャッチコピーを変えたら急に売れるようになった
  • セールストークを見直したら急に売れるようになった
  • 販売チャネルを変えたら急に売れるようになった
  • ターゲットを見直したら急に売れるようになった

結局のところ、商品なりサービスなりというものは、その良さが伝わるべき相手に伝わって初めて売れるのですから、伝えるべき「良さ」がどういうものなのか、伝わるべき「相手」とは誰なのか、といったことを見直した場合に売れ方が変わるのは当然といえば当然です。上の例では、最初の3つが伝えるべき「良さ」を見直した例、最後の2つが伝わるべき「相手」を見直した例だと言えるでしょう。

さて、僕たちWeb制作者は、コピーライティングについて、ユーザビリティやアクセシビリティやSEOの観点から、他のメディアにおけるコピーとは少し違った考え方をします。その理由は、「Webにおいては、コピーは、そのコピーが使用されるコンテクストやコンテンツから独立して使用されることが多い」ということです。Webにおけるコピーとは、ここでは、title要素の内容や、h要素の内容や、a要素の内容として使われる文字列を指しています。具体例を少し挙げてみましょう。

  • 検索結果で、検索されたページを表すラベルとして使用される(title要素の内容)
  • ブラウザのブックマーク(お気に入り)の中で、ページを表すラベルとして使用される(title要素の内容)
  • ソーシャルブックマーキングなどで、ブックマークされたページを表すラベルとして使用される(title要素の内容)
  • サイト内で、ナビゲーションリンクのラベルとして使用される(a要素の内容)
  • 読み上げブラウザなどでページの構造木を取り出す際のラベルとして使用される(h要素の内容)

こうしたことから、Webにおけるコピーライティングにおいては、ページ全体のコンテンツや、ページ内やサイト内のコンテクストなどに依存することなく、コピーが単独でも意味を伝えられるように、特に情報を的確に伝達できるように工夫される必要があります。具体的に行われていることとしては、以下のようなことがあります。

  • title要素の内容にはそのページの内容をよく表すキーワードを含める(主にSEOのため)
  • title要素の内容はページごとにユニークなものにする(主にユーザビリティ向上のため)
  • a要素の内容(リンクラベル)はリンク先のページの内容を表すものにする(ユーザビリティ・アクセシビリティ向上のため)
  • h要素の内容は、その後に続くコンテンツをよく表すコピーようにする(主にユーザビリティ向上のため)

こうしたコピーの書き方についてはすでに定着した感がありますが、ここ数年ではこれに加えて、特にtitle要素の内容について、いかに魅力的なコピーを書くか、といったことも議論されるようになってきました。これは、title要素の内容の文字列が、検索結果におけるリンクラベルとして使用されることから、検索結果画面からの来訪率を高めるための工夫として、つまりクリック率を向上させるための工夫として、「魅力的であること」「創造的であること」が求められるようになってきた、というものです。

もちろんページの内容を的確に表したtitle要素のコピーを書く、という前提を満たした上でのことであることに違いはないのですが、魅力的なコピーを書くことによって、同じように検索結果に表示された他のページよりも検索者の興味をより強く惹きつけることができれば、より高い確率で情報を受信者へと伝えることができる、ということでもあるのです。情報発信というのは、よりよい情報をただ発信するだけではなく、その情報へとユーザーが到達しやすくするための工夫も同時に考えるべきであり、その工夫の一つとして、単に情報の内容だけでなく、「その情報の持つ魅力をも確実に伝えるコピー」が求められるというわけです。

そしてこの傾向は、情報検索の方法が多様化するにつれて、例えばソーシャルブックマーキングの人気ランキングなどでページのタイトルが一覧され、その中からユーザーが興味を持ったものを選択してアクセスする、といった行動様式が定着するにつれて、より顕著なものになっています。例えばはてなブックマークの「最近の人気エントリー」などを見ると、(ユーザーの属性はいくらか限られるものの)思わずクリックしたくなるような、ユーザーにとって魅力的なコピーがずらりと並んでいることが見て取れます。検索結果やソーシャルブックマークなど、数多くのコピーが一覧される中で「より興味を引き付けるコピー」を書く、ということは、我々Web制作者にとっても重要なスキルの一つになってきていることがわかります。

数多くのコピーが一覧される中で「より興味を引き付けるコピー」を書く、といえば、新聞や雑誌の見出し、そして書籍のタイトルはそのよい見本になります。電車の中吊り広告における週刊誌の広告や、女性週刊誌の表紙、そして書店の棚のなかで背表紙だけを見せて並んでいる書籍たちなどはまさにコピーの展覧会のようで、見ているだけでも飽きることはありません。また、コピーが売り上げに直結するようなカタログ通販の世界なども、たいへん参考になるでしょう。ブログの文章術などがgooファンコミでも話題になっていたりするように、文章によるコミュニケーション術というのは現代の僕たちにとってとても関心の高い話題であると思います。中でも、僕が今回強くおすすめしたいのが「より興味を引き付けるコピー」です。

ここに一冊の本があります。花王の広告主席ディレクターとして、洗濯洗剤アタックの「スプーン一杯で驚きの白さに」や、メイク落としのメイククリアジェルの「お風呂でメイクが落とせる」などのような、売り上げに直結するコピー(どれも差別化の難しい商品ばかりです)をプロデュースしてきた田村仁さんによる著書「たった1行で!売る お客様が思わず買ってしまう商品キャッチフレーズの極意」です。この本の冒頭で田村さんは、以下のように述べています。

たった1行で!売る お客様が思わず買ってしまう商品「キャッチフレーズ」の極意よりよい商品をつくり、商品の良さを徹底的に伝達する。企業が成長し反映していくポイントはこの2つのプロセスに凝縮されます。たとえば、花王が24期にわたって連続して増益を達成した根源的な理由もここにあります。

「スプーン一杯で驚きの白さに」。かつて私が作成した花王の洗剤のアタックの「商品キャッチフレーズ」です。1987年の新発売直後から現在に至るまでアタックが洗剤のトップブランドとして君臨しているのも、この2つのプロセスがあったからに他なりません。

本書では商品の魅力を一瞬で伝達する「商品キャッチフレーズ」開発技術を中心に、あなたの勝因を売れ筋商品に変える手だてを具体的に解説いたしました。

たった1行で!売る お客様が思わず買ってしまう商品「キャッチフレーズ」の極意 : 田村仁

上の引用の中で「商品」となっているところを「情報」と読み替え、「企業」とあるところを「サイト」と読み替えて、もう一度読んでみていただければと思います。冒頭部分を読み替えるとこうなります。「よりよい情報をつくり、情報の良さを徹底的に伝達する。サイトが成長し反映していくポイントはこの2つのプロセスに凝縮されます」。いかがでしょう? グッと来ませんか?

この本の中ではキャッチフレーズを、その役割の面から「商品キャッチフレーズ」と「広告キャッチフレーズ」の2種類に分類した上で、「商品キャッチフレーズ」について解説しています。その役割の分類とは以下のようなものです。

商品キャッチフレーズ
一瞬で商品のチャームポイントを伝える
コミュニケーションの流れ「キャッチフレーズ→商品」
広告キャッチフレーズ
一瞬で広告に引き込む
コミュニケーションの流れ「キャッチフレーズ→広告→商品」

簡単にいえば、商品を目立たせ印象づけるためのものが「商品キャッチフレーズ」で、広告自体を目立たせ印象づけるためのものが「広告キャッチフレーズ」であるといいます。僕たちのように情報を扱うのであれば、僕たちが学ぶべきものは上記でいう「商品キャッチフレーズ」だと思いますが、本書では先の引用どおり、「魅力を一瞬で伝達するキャッチフレーズ」の開発技術を中心に解説されており、情報の伝達を効果的なものにしたいと願う人には是非ともおすすめの一冊です。

ある意味セールス寄りの「売れる」コピーを作るための具体的なテクニックを解説した類書は数多くあり、僕もたくさんの本に目を通しましたが、中でも僕の最大のおすすめは先述の「たった1行で!売る お客様が思わず買ってしまう商品「キャッチフレーズ」の極意」に尽きます。Webに応用しやすい理論や着想法などはこれ一つで身につくといってもよいでしょう。しかし、実際に「コピーライティング」というやつをやってみようと思っても、そこはやはり訓練や実習は欠かせません。そこで、そうした実践に最適なもう一冊ご紹介しようと思います。

その一冊とは、日本デザインセンターでコピーライターやクリエイティブディレクター、総合戦略室などを経たのち独立した石原雅晴氏によるもので、帯にコピーの1000本ノックとあるように、事例満載でいやでもコピーについて「考え・発想する」ことが身につく本です。しかも、この本の冒頭には著者による以下のようなコピーに対する考え方が披露されており、これもまた僕たちのようなWebの世界に携わるものにとってはたいへん共感するものです。

発想するコピーライティングコピーライター、クリエーティブ・ディレクターとしても活躍する仲畑貴志氏の仕事を見てみるといい。近著「コピーのぜんぶ—仲畑貴志全コピー集」を見てあらためて感じるのだが、仲畑氏には子犬や猿の名作はあっても、あまりタレントは使用していない。きちんと商品をふまえてコピーを発想する。

僕はイメージを否定するつもりはない。が「広告はイメージだ」とばかり、商品や企業から離れ、イメージ操作だけで売ってやろうと考える人が、どうにも許せない。

発想するコピーライティング : 石原雅晴

ここで著者が言おうとしていることは、商品や企業が発信したい情報から乖離し、イメージだけを先行させるような、いわば広告のための広告のようなものは意味がない、ということです。僕は広告業界の人間ではありませんから、広告業界におけるそうした風潮に対して特に思うところはありませんが、ことWebにおけるコピーに関していえば「情報から乖離したイメージ先行」のコピーが何も意味を持たないことくらいはわかります。この意味で、氏の考え方には非常に共感を覚えるのです。先に紹介したように、まさに「1000本ノック」の如く事例が満載になっていて、それらを比較しながら考えさせられるような構成も見事です。

ソーシャルメディアにおける露出が話題になる昨今では、コンテンツとは別のところで再利用されやすい「コピー」を、「その情報の持つ魅力を確実に伝える」力のあるものにするということは、情報発信を行っていく上で大きな力になるでしょう。それぞれよく売れた本ですので、すでに目を通したという方も多いかと思いますが、あらためておすすめします。「たった1行で!売る お客様が思わず買ってしまう商品キャッチフレーズの極意」と「発想するコピーライティング」、必読です。

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