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広告の衰退とその次にくるもの

マス広告の効果が衰退してきた、という話はインターネット以前からよく耳にすることでしたが、直感として、インターネット以降はその傾向がより顕著になったように思います。セス・ゴーディンなどは、「すべてのマス・マーケティングはスパムである」とまで断じるほどです。テレビCMなどを見て「おっ!?」と思うことはたまにはありますが、その他の膨大な量のCMをすべて無意識のうちに無視していることを考えると、テレビCMに代表されるマス広告の効果が低くなっているのは当然のことだと思えます。そして、マス広告に代わってPR(パブリック・リレーションズ)やその結果としてのパブリシティが注目されたりするわけですが、この流れについても、確かにそうだと思いつつも、でも全てではないだろう、というふうに思ってします。

ブランドは広告でつくれない 広告 vs PRアル・ライズとローラ・ライズのライズ父娘による「ブランドは広告でつくれない」では、新規のブランドを構築するために必要なのはPRであり、広告の役目は、すでに認知されたブランドを消費者に思い出させる時に役に立つ程度になった、と述べられています。もはや広告に注意を払う人はおらず、ましてや広告を信頼する人はおらず、どんなに莫大な広告費を投入したとしても、それだけでブランドを構築するのは無理で、代わりに、中立な立場の(少なくともそう思われている)メディアの中で、広告ではなく記事やニュースとして露出することによって、確実に消費者にメッセージを届けることができ、ブランドを構築することができる、というわけです。

この本の中では、全編を通じ一貫して「いかに広告が役に立たないか」ということを延々と説明し、その説明と表裏をなす形で「いかにパブリシティが強力で有用か」ということもまた延々と説明されます。この論説に都合の悪いことはほとんど出てこない上に、比喩は恣意的で、はっきりいうとかなり感じの悪い本です。さらに、「たいていの人にとって『知っていること』とはさまざまなメディアを通じて見聞きしたこと、あるいは信頼できる人から聞いたことなのだ」といったこと書いていながら、その「信頼できる人から聞いたこと」については特段の言及がないのはいかにも物足りない感じがします。このあたりは、著者が広告業界に身を置いているからかもしれませんし、監訳者がPR会社であるからかもしれませんが、いずれにしても少し偏った印象を受けます。

パブリシティの有効性についてはもはや疑いの余地はありませんし、新聞や雑誌に紹介されることによって認知度もブランドも向上するということは、僕自身が何度も経験していることです。もちろん、広告の効果が薄れているであろうことも直感的に想像できます。しかし、今やインターネットの時代であり、メディアだってそれほど信頼されておらず、パブリシティは万能ではないんじゃないか、という疑問がわき起こってきます。つまり、今のWeb2.0などといわれているネットの世界は「パーソナルな世界」であって、広告を信用しないのはもちろん、メディアも全面的に信用することはなく、むしろ「個人から発信されるメッセージ」が重要なのではないか、という疑問です。また、そもそもブランドはメディアで作られるのか?という疑問も起こります。

広告が役に立たなくなった経緯や、そのパブリシティを生み出すための仕掛けなどについては、「なるほど」と思えるところがかなりあります。特に、著者がしつこく繰り返す「信頼」の部分では、確かに広告は信用されず、パブリシティは信頼されます。そして、ここをもう少し深読みするなら、現在の傾向としては、メディアから流れてくる情報以上に、僕たちは、僕たちと同じ立場の消費者の声を信用する傾向にある、ということに気付きます。にちゃんねるや、アマゾンのレビューや、カカクコムや、アットコスメの情報は、広告よりもパブリシティよりも信頼に足るように思えますし、信頼している友人が書いているブログは、それらよりもさらに信頼に足るものです。この意味では、ブランドは広告が作るものでもパブリシティが作るものでもなく、消費者が作るものになっていくのかもしれません。

著者ららがいう「広告」も「PR」も、いずれもマスメディアの上での話です。この本の中では、マスメディアの威力自体の衰退には触れられていません。しかし僕たちのように活動の中心をインターネット上に置いている人たちは、パーソナルメディアとしてのインターネットや、マス情報ではなくパーソナル情報のようなものの今後については注目しておかなければいけないかもしれません。著者らがしきりに訴えた「広告の衰退」に近いことが、もしかしたらパブリシティにも起きるかもしれないからです。もちろん、パブリシティの威力がなくなったり、半分になったりするような顕著な減り方はしないでしょうが、現時点でも、コア過ぎたりニッチすぎたりする情報はパブリシティ向きではなく、パーソナルメディア向きであり、この傾向は今後も続くんじゃないかとは思います。いろいろなことを考えさせられる一冊でした。

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