フリーランスにとって、仕事を取れるかどうか、またはギャラが高いか低いか、といったようなことについて、どうも「実務能力」はそれほど影響しないのではないか、というようなことは、僕も以前から何となく考えていました。営業活動と呼べるような活動をすることなしに、僕は現時点ではそれなりの仕事に恵まれています。僕がそのような状態になれた要因は、僕の実務能力というよりは、むしろ知名度や印象といった何かブランド的なもののほうがウエイトが大きいのではないか、というような考えです。
つまり、僕が決して安くない仕事に恵まれているのは「個人ブランド」ともいうべきもののお陰であり、仕事の受注やギャラの決定に際しては、ブランドが実務能力以上に強く影響しているように思える、ということです。思える、どころか、これはほとんど確信に近いもので、実のところ僕がやってきたこととまったく同じ手法を当てはめることで、「松下健次郎」や「坂本邦夫」といったスターが生まれたりもしています。個人ブランドの構築というのは、やはりとても大切なことのようです。
もちろん「個人ブランド」はその人の実務能力なしに成り立つものではないのですが、いくら実務能力が高かったとしても、それが即時に仕事に結びつくというものではありません。また、決して高いとは言えない実務能力しか持たない人が、十分な量の仕事や高いギャラに恵まれているところを見ることも珍しいものではありません。さて、僕がそんなことを考える中で出会った本が、「パーソナルブランディング 最強のビジネスツール『自分ブランド』を作り出す」(ピーター・モントヤ著)です。この本の内容は本当に衝撃的でした。僕が今までやってきたことのほとんどが書かれているだけでなく、僕が見落としていたことや、よりスマートなやりかたも書かれていたからです。
あなたがトレーニングを受けていようが、高い教育を受けていようが、経験を積んでいようが、適切な形で適切な人間の目に何度となく触れていなければ、能力は劣っているものの、あなたより認知度が高い競争相手に仕事を奪われることになる。
(中略)
人々があなたの名前や顔を繰り返し見れば、あなたが成功を収めており、したがって、まだ見たこともないサービスプロバイダよりはマシにちがいないと思う。
上の文は、本書の第3章「パーソナルブランディングの役割」からの引用です。本書では、こういった少し強引な印象を受けるような煽りかたでパーソナルブランディングとは何かということと、その重要性を説き、パーソナルブランドを構築するために必要な手順を示します。終始「ライバルに打ち勝ち、莫大な収入を!」といった調子なので、その雰囲気には辟易しますが、内容はたいへん素晴らしく、今日から活用したくなるノウハウがたくさん詰まっています。いくつかは、目から鱗が落ちるようなことも出てきます。
内容はブランディングに関する本らしく、ポジショニングやターゲティング、差別化といった話題がほとんどです。しかも、それらの一つ一つは、ある程度マーケティングの基礎的な部分を知っている人にとっては決してもの珍しいものではなく、むしろ言い尽くされた感のあることがほとんどです。はっきり言えば、本書の内容は企業が行うマーケティング活動(特にブランディング)の個人版に過すぎず、だからこそ、それほど目新しいことは書かれていないのです。
しかし、この本の素晴らしいところは、そのブランディングを行う主体を「個人」に置き、「個人がいかにパーソナルブランドを構築するか」というテーマに話を絞ってあるところです。個人のブランディングですから、時間も予算も広報活動に使える手段も限られています。その中で、相手により強い印象を与え、好ましい形での知名度をより高めていく方法が語られています。
この本はすべての働く人にとって重要なものとなると思いますが、とりわけフリーランスには強力なものとなるでしょう。「パーソナルブランディング 最強のビジネスツール『自分ブランド』を作り出す」(ピーター・モントヤ著)おすすめです。



