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書籍の執筆は仕事というよりは趣味かもしれない

僕は過去に SEO 関連の2冊の著書があり、うち一冊は日本初の SEO 書籍で、今度の本(また SEO )が3冊目となります。それだけならすごく立派そうですが、現実はそう甘いものではありません。書籍の出版事情をよくご存じでない方にお会いすると決まって、「住さんは印税収入で悠々自適ですね」といったような意味のことを言われますが、悲しいことに、これは全く実態にそぐいません。むしろ正反対です。例えば、現在執筆中の本をもとにしてで計算してみましょう。

収入源としての書籍執筆は割に合わない

まずは収入面ですが、この種の本の一般的な例に倣って、

  • 初版部数: 4,000部
  • 初版印税: 8%
  • 販売価格: 2,300円

という(実際には部数や価格は変化するかもしれませんが)条件で計算してみましょう。すると、出版時の僕の収入は「73万6千円」となります。これを多いと捉えるか少ないと捉えるかは人それぞれでしょうが、支出面も同時に考慮するとどうなるでしょうか。支出面の内訳は以下のようになります。

  • 取材費用
    • 東京大阪間を2〜3往復するために要する交通費
    • 1週間以上の宿泊に要する宿泊費
    • 電車代やタクシー代など取材先の地域での行動に要する交通費
    • 取材場所に飲食店を利用する場合の飲食費
  • 参考資料(書籍やデータなど)を揃えるための費用
  • 企画から執筆に関わっている期間に受注できたはずの別の仕事の機会損失
  • 以前に蓄積してきた知識や実績や取材先の人脈などの構築に費やしてきた費用

これらをすべて自前で賄うわけですから、初版だけで考えたら、どう計算しても収支は赤字になります。書籍の執筆というのは決して割のいい仕事ではないのです。直接的な収入だけを考えるなら、普通に働いた方が割がよいことは明らかでしょう。直接的な収入だけなら、おそらくコンビニやガススタのバイトのほうがずっと上なのではないでしょうか。

それでも僕は本を書く

それでも、僕は本を書きます。なぜなら、書籍の執筆は多くの欲求を満たし、様々な快感を提供してくれるからです。その欲求や快感とは、すぐに思いつくものだけでも、およそ以下のようなものです。

  • 求知欲求(取材では好奇心が満たされまくる快感が得られる)
  • 秩序欲求(自分が持っている知識を整理し、まとめ上げること自体が快感)
  • 養護欲求(自分の書いたものが誰かの役に立つというのはすごい快感)
  • 親和欲求(読者や取材先や他のライターや編集者との交流が生まれる)
  • 保存欲求(自分の作品が形となって残るというのは大きな快感)
  • 達成欲求(本を書き上げたときに得られるカタルシスは最高)
  • 承認欲求(実際以上の名声が得られ、名誉欲が満たされる)
  • 自己実現欲求(自分自身の可能性や創造性を試し、成長することができる)
  • 刺激欲求(書籍の執筆の前後には例えようもない刺激がある)
  • 顕示欲求(書店に自分の名前が書かれた本が並ぶのは快感)

これらの欲求を満たし、快感を得るというのは、単純に金銭に換算できるものではありません。たとえ金銭的にはマイナスであろうと、僕には本を書く動機が十分にあります。文字通りプライスレスな価値があるのです。

テクニカルライターというのは儲からない稼業ですが、それでも多くの同業者がいるというのは、まさに上で列記したような理由あってのことでしょう。執筆の仕事というのは、人気作家やエッセイストなど、数十から数百万部を売るような人たちを別にすれば、ほとんど趣味のようなもので、生活の糧を得るというよりは、人間としての欲求を満たすためにする仕事なのではないかと思います。少なくとも僕にとってはそうです。好きなこと、楽しいことだからこそ、気合いを入れて臨むことができるのではないかと思うのです。

# それから本を出すというのは、ドラ息子の僕としてはこれ以上ないくらいの親孝行でもあったりもします。

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