45mmリフトアップキットでジムニーJB23の足回りをカスタマイズ

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道幅の狭いところでもスイスイ

僕の愛車は JB23W/3型のジムニーで、新車で購入してからまる7年が過ぎました。とはいえ極めて良好な状態を保っているということで、まだしばらく乗り続けることを決意し、気分転換を兼ねて足回りを中心にカスタマイズすることにしました。カスタマイズ内容の検討から45mmリフトアップ、カスタマイズ後のインプレッションまでの記録です。

カスタムを考えた動機

日本の林道や農道の多くは軽トラックでの走行を前提としたものが多く、普通自動車の感覚でいえば0.8車線くらいというような狭い道(巨大なクロカン四駆では進入すらできない)がほとんどです。さらに、林業や農業の衰退からか、放置されて荒れ放題になっている道も少なくありませんから、ある程度以上の走破性も必要になります。

日本には軽トラかジムニーでないと走れない道(狭い農道や荒れた林道など)が多く、そうした道の通行は他の四輪では代替できません。僕はそうした道を好んで走る趣味があるため、車種の選択肢はどうしても狭まります。また特に欲しいと思える車種もなく、現在のジムニーは好調です。そんなわけで、まだまだ乗ることを決めました。

とはいえ、7年も乗ってきたJB23ジムニーに少々飽きてきたというのも事実。同じ仕様の同じ車に7年も乗れば、飽きてくるのも当然です。ということで、気分転換に足回りを中心としたカスタマイズを施すことにしました。足回りの部品を交換すれば、乗り味はガラッと変わりますから、気分転換にはもってこいです。

また足回りだけでなく、あちこちの板金塗装やホイールとタイヤの交換、外装パーツの取り付けなども実施します。新車購入から7年経って、あちこちくたびれていますから、まとめてリフレッシュしよう、という計画です。これによって気分を新たにすることができれば、車を買い換えるよりはずっと安上がりでエコです。

足回りカスタマイズ済み

さて先に完成状態から紹介すると、上の写真のような感じに仕上がりました。ノーマル車両と比べれば外観なども大きく変化しているのですが、違和感のない地味で綺麗な見た目に仕上がっているのではないかと思います。

車作りの方向性

カスタマイズの方向性ですが、僕が走るステージというのは基本的にすべて道路(もちろん未舗装路も含まれますが)ということで、ターマック性能の向上を中心に、グラベルでも走りやすいようにカスタマイズする、という方向性でいくことに決めました。

僕はロッククローリングとかモーグルとかの競技をやるわけではなく、競技出場の予定もなく、オフロード(未舗装路の意味ではなく道ではない場所の意味)走行もほとんどしません。なので今回の改造では、リフトアップはわずかにとどめ、舗装路や未舗装路での操縦性を確保するためにノーマルのスタビはそのまま残す考えです。

また、ジャンプの着地にも耐えるような固いショックアブソーバーは不要なので、入り側はノーマルよりわずかに固い程度、戻り側は堅めという感じの、コーナリングでの姿勢変化の少ない乗り心地重視のものを、と考えました。

また、いかにも改造車然としたコテコテの雰囲気になることは避け、詳しくない人が見れば「まあこういう車なんだな」と思うような地味な見た目になるようにと考えました。見た目については、7年前の新車購入と同時にカスタマイズしたときも同様の考えで、その当時に実施したカスタマイズは以下のような内容でした。

スズキスポーツ ウレタン フロントバンパー
衝撃吸収性に優れたウレタン製バンパー。他の社外バンパーのような攻撃的なルックスではなく、純正品を思わせるシンプルなデザインが魅力。現在は廃番になっており、後継品はモンスタースポーツ XCLウレタンバンパー フロント
スズキスポーツ アルミスキッドプレート
上記フロントバンパー用のスキッドプレート。シンプルなデザインで悪目立ちしないのが魅力。現在は製造販売元がモンスタースポーツに移行し、モンスタースポーツ アルミスキッドプレートとして販売されている。
スズキスポーツ ウレタン リアバンパー
シンプルなデザインで非常によいものの、ナンバープレートのブラケットとバックランプがないので、僕はバンパーに穴を空けてナンバーとナンバー灯を設置し、バックランプはバンパー下に自作ステーで取り付けた。現在は廃番になっており、後継品はモンスタースポーツ XCLウレタンバンパー リアで、これはナンバープレートのブラケットもナンバー灯もバックランプもつけられるようになっているので、僕も後でこれに交換した。
スズキスポーツ クロスカントリーマフラー
クロカン向けに低中速域のトルクアップを重視したステンレス製マフラー。ディーラーでも扱っているほどなので音は静か(近接排気騒音89.0dB/アイドリング68.0dB)で、パイプ径も細く(φ48.6mm)、見た目もノーマルに見えるくらいあっさりしたデザインが素晴らしい。後継品はモンスタースポーツ クロスカントリーマフラー3
BLITZ RACING METER i-D
ブリッツ製ブースト計。マフラーを交換したときに過給圧の変化を見たかったために装着。レスポンスがよく、機構が単純で、しかも価格が安い機械式ブースト計を選択した(僕が購入したものは廃番で後継製品なし)。

外装パーツにスズキスポーツ(現モンスタースポーツ)製品を選択したのは、いかにも純正品然とした大人しく収まりのよい見た目が気に入ったからです。またスズキスポーツ製のマフラーは、他の社外マフラーに比べると排気音もずっと静かで、改造車らしい下品な雰囲気が小さいのが魅力です。こうした方向性は、今後も保持したいと考えています。

今回のカスタム内容

結果的には、足回りのパーツはアピオさんのスーパーつよし君 安心キット(2015年9月に販売終了。後継はスーパーつよし君 銀八 安心キット)を選択しました。このキットはリフトアップ45mmで固めのセッティングと、舗装路やダートに適していて、競技よりも日常使いや林道走行に向いています。セット内容は以下の通りです。

アピオ スーパーつよし君A2000Ti ROADWINコイルスプリング
約45mmアップ。チタン配合「つよし君A2000Ti」サスペンション。ラリー向けにセッティングされておりバネレートは高めで、舗装路やダート走行向け。クロカンにはあまり向いていない。
アピオ ROADWINショックアブソーバー黒ラベル
縮み側は柔らかく、伸び側は固いセッティングのショックアブソーバー。衝撃とピッチングを抑えて乗り心地を向上させている。現在は廃番で、後継製品はアピオ ROADWINショックアブソーバー 銀八
アピオ 偏芯ブュシュ(キャスターブッシュ)
フロントのキャスター角とホーシング角度を補正するための偏芯ブッシュ。リーディングアームのホーシング側に1個の使用すると1度30分だけキャスター角が寝る方向に補正される。購入したキットには片側1個ずつ付属していて、それをそのまま使用した。
アピオ 調整式ラテラルロッド(フロント用リア用
3インチアップまで対応の調整式ラテラルロッド。リフトアップによる横方向へのホーシングのズレを補正する。赤い色は格好いいけど、ちょっと派手すぎる気もする。

タイヤとホイールも、舗装路での快適性と燃費、未舗装林道での走行性を両立させるべく、オンオフ両用のATタイヤとしました。燃費や騒音を配慮してサイズはノーマルサイズを選びました。アルミホイールは重量の軽さを重視し、色はボディ色に合わせて白色を選択し、お得なSSJ RACINGスーパーホワイト&ジオランダーAT/S 175/80R16セットに決まりました。セット内容は以下の通りです。

ヨコハマ ジオランダーAT/S 175/80 R16
実用重視で選んだATタイヤ。ノーマルサイズで機構への負担が小さく、ロードノイズも小さく、耐摩耗性が高く、燃費もいい。ハイドロ性が高いため雨に強く、ダートや雪道にもそれなりに対応する。まあ八方美人的で無難なタイヤ。
SSJ RACING アルミホイール スーパーホワイト 5H 5.5J×16 オフセット+20
5本スポークのデザインで、スポークはスリット入り。1個あたり7.25kgと軽量なのが、軽自動車のジムニーには嬉しい。ボディーカラーと同じホワイト塗装が決め手になって選択したものの、実物はボディーカラーのスペリアホワイト(26U)より少し青みが強く、まったく同じ色というわけではなかった。

これらの交換・装着作業はショップにお願いするつもりなので、ついでにボディー各部についた積年のキズや凹みも補修してもらうことにしました。そうしたわけで板金塗装の作業が加わるということで、これまたついでに外装パーツを1点だけ追加することにしました。インタークーラーのエアインテークを大型化するパーツで、アピオさんのコブラエアインテークです。これも表面を仕上げて塗装して装着してもらいます。

ショップの選定

僕がこうして検討したような仕様は、硬派なクロカン仕様とはちょっと異なるものなので、その筋のコテコテなショップには何となく行きづらくなります。僕の自宅から15km圏内には、ジムニーを中心に扱うクロカンの専門店みたいなショップがいくつもあり、そのうちの何店かは実際に覗いてみたのですが、どうにも敷居が高いというか何というか・・・。

今回の僕のカスタマイズの仕様は硬派なクロカン仕様ではありませんが、かといって軟派なドレスアップ車というわけでもないので、ドレスアップ系のショップに持ち込むのも微妙なところです。もちろん、この種の社外品を使ったカスタムは、基本的にはディーラー系のお店では請けてもらえません。

そういうわけなので、こういう作業を安心してお願いできるショップというのは案外と少ない(または見つけにくい)もので、ちょっと苦労するんです。

そんな中で今回お世話になったのが、僕の居住地と同じ堺市北区にある北山自動車整備工場さん。ネット上をうろうろしていて運良く発見したお店です。各種の四駆車やジムニーを中心に、二輪まで含めた様々な車種を扱っています。僕はジムニーだけではなくダートバイクも趣味なので、これはちょうどいい、ということで、そこに依頼することに。

入院中

今回依頼した北山自動車整備工場さんは、専門ショップならではの敷居の高さのようなものはなく、社長はじめ従業員の皆さんも(あとお客さんたちも)気さくで感じが良くて、とっても満足です。パーツもすべて持ち込み(僕が自分で通販で購入しました)だったのですが、快く対応してもらえました。

テストランとインプレッション

ちょうど出張があったのでテストランを兼ねてジムニーで行ってきました。まずは市街地ですが、自宅の近くや尾道の市街地を走ってみた限りでは、ステアリングが軽くなったこと、ステアリングの戻りが少し弱くなったことと、サスペンションの突き上げが少し大きくなったこと、それとわずかに視点が高くなったことなどを感じた程度で、良くなったのか悪くなったのかの判断はできませんでした。

ステアリングが軽くなり、戻りが弱くなったことについては、おそらくキャスター角の補正量が十分ではなかったのでしょう。また、サスペンションの突き上げ感が少し大きくなったことは、同様にホーシングの角度の補正が足りていないのではないかと思います。これらについては今後の課題です(補正を実施しました)。

渋滞の阪神高速を抜けて山陽道に入ると、意外なほど高速道路での安定性が高まっていることに驚きました。高速走行時でもまったくぶれることがなく、ブレーキング時やコーナリング時の姿勢変化も小さく、ノーマル状態から比べれば断然よくなっています。

山陽道はアップダウンが多い高速道路ですので、コブラエアインテーク(インタークーラーのインテークの大型化)の効果がわかりやすいのではないかと思ったのですが、これについては残念ながらまったく体感できませんでした。楽天のレビューを見ると効果を体感できたという人が多いのですが、この程度の部品に体感できるほどの効果があるはずもなく、僕の中ではドレスアップパーツという位置づけですので問題ありません。

最も驚いたのはしまなみ海道の走行時です。しまなみ海道は尾道から今治に至る大小の島々を橋で結んだ道路ですが、その構成上、橋の上では強い横風をまともに受けます。従来ならば、風に煽られて横に振られていただろうほどの強風を受けても、ほとんど影響なくまっすぐ走れました。重心位置は高くなっているにもかかわらず、こういう結果だったことは意外でした。

尾道で走ったワインディングでは、ロールが明らかに小さくなっており、サスペンションが長くなって重心も高くなったにもかかわらず、非常に安定して走ることができるようになりました。従来はワインディングで少し調子に乗ると、イン側のタイヤが浮き上がりそうになって怖かったのですが、現在の足は踏ん張りが強く、安心してコーナーに突っ込めます。

尾道の浄土山では、山頂付近の浄土寺奥の院を目指して登っていったところ、期せずして未舗装路に遭遇しました。基本的にはよく踏み固められた走りやすいダートなのですが、ぬかるんでいる部分も一部あったほか、アップダウンの急だった箇所では雨水が流れた跡が大きな溝になっており、少々走りにくかったのですが、新しいサスペンションとタイヤのおかげで、難なくクリアできました。

下の写真は長い上り坂のアプローチ。これくらいの傾斜なら、新しいタイヤのおかげで二駆モードでも何の不安もなく登れます。この場所も道幅が狭く、ジムニーですらマージンは30cmほど。路肩も弱いので、ランクルなら脱輪の心配をする必要がありそうです。

長い上り坂のアプローチ

また、下の写真では道幅がとても狭いことがわかるかと思います。こういう場所でも、ジムニーならスイスイです。

道幅の狭いところでもスイスイ

市街地での性能向上(乗り心地の向上も含め)を実感できなかったのは残念でしたが、これはショックアブソーバーが馴染んできたらもう少しよくなることでしょう。その一方、高速道路、ワインディング、ダートでは、まったく別物と言える素晴らしい性能を発揮してくれたことについては非常に満足です。従来のノーマル足回りよりもずっと走りやすく、乗り心地もよくなりました。

そして僕にとっては、別の車になったかのような新鮮な感覚がとても嬉しいです。サスペンションを交換すると車の乗り味はガラッと変わりますので、少しばかり飽きのきていたタイミングでのこのカスタマイズは、ジムニーへの愛情が復活するいいきっかけになりました。全体として、非常に満足度の高いカスタムでした。