以前のエントリ「SEOツールを一挙7点公開」でお知らせしたツール群の公開とプレスリリースの配信について、その反響を踏まえて、僕の狙いや現在のSEOへの考え方などを示してみたいと思います。ここで僕が示したいのは、SEOというのは現在では「被リンクを得る」ためのテクニックとなっており、簡単にいえば「釣り」や「煽り」のように、話題(ネタ)を提供し、ネット上でのコミュニケーションを誘発して被リンクを獲得するものだ、ということです。そして、SEOの本質的スキルというのは、「話題や話題になるアイデアを提供し、煽るスキル」のようなものなのではないか、という考察です。
まず、SEOについて一般に(僕も含めてですが)抱かれているイメージというのは、チマチマとしたトリックの固まりで、胡散臭く嫌らしく、良識ある人々であれば手出ししにくい、といったイメージがほとんどだと思います。これは、SEOが普及していった過程で、そのそれぞれの段階でSEOを導入した人々のイメージによるものだと思います。そこで、SEOによって検索結果の上位を独占していたグループの移り変わりを、以下にまとめてみます。
- スパマー主流の時代
- アダルトコンテンツ系業者がなどスパム的なテクニックによって検索エンジンをハックするのがSEOの主流だった時代があります。これは〜2000年くらいまででほとんど終了しています。この時期によく使われていたトリックは、キーワードをマークアップするタグを工夫することで、ページ内要因のスコアリングを高めていくという方法です。最適化するキーワードは、サイトの内容とは無関係に選択され、検索頻度の高そうなものであれば何でも使用しました。
- ネットショップオーナー主流の時代
- まとまった広告予算を持たない中小零細のネットショップ(多くは個人運営)が、広告を打つ代わりとしてSEOの活用に力を入れ始めたのが2001年頃からで、一時はスパマーのサイトとそう違わないネットショップが量産されました。スパマーのサイトとの大きな違いは、サイトの内容と無関係なキーワードを使用しない、ということくらいのもので、使用される手法の多くはスパマーのサイトと同様のものでした。ネットショップによるSEOの活用はいまも続いていますが、検索エンジンのアルゴリズムの進化によってスパム的なトリックの多くが使えなくなったため、以前ほど見苦しいものではなくなりました。
- アフィリエイター主流の時代
- 日本でもアフィリエイトマーケティングが一般的になってくるにつれて、2002年頃からは、数多くのアフィリエイターによって、SEOのトリックを活用してユニークなコンテンツを持たない広告だけのサイトにトラフィックを誘導するような例がよく見られるようになりました。これもまた、スパマーとほぼ同様の手法が採用されており、この傾向は今も続いていますが、2005年頃からは、内容のないアフィリエイトリンクだけのサイトが検索結果の上位を独占するような状況はほとんどなくなりました。
- ブロガー主流の時代
- 2004年頃からは、検索結果の上位に登場するためには「良質な被リンク」を得ることが必須の条件となり、基本的には「誰もが認める良質なサイト」が検索結果の上位に表示されるようになりました。そんな中で、簡単に大量のリンクを集めることが可能なブログツールが隆盛し、検索結果の上位にブログのエントリが登場する率が上がってきています。そして、そうしたブログの中には内容の乏しいスパムまがいのものも多くあり、一部では非難の声も上がりました。また、上で述べたネットショップやアフィリエイトサイトなども、集客手段としてのブログに注目し、従来からのページ内要因に対するトリックではなく、ブログを使って外部からのリンクとトラフィックを集める方法が主流になりつつあります。
- 中堅企業から大企業もSEOに参入する時代
- 中堅企業から大企業であれば、もともと市場での認知度もそれなりにあり、被リンクを大量に抱えているために、検索結果での露出にもまずまず成功していますし、広告予算もそれなりに持っています。しかし、2005年頃からは、サーチからのトラフィックをさらに多く集めたり、企業イメージの向上などを目指して、中堅企業や大企業がSEOを積極的に取り入れるケースが増えてきました。これらのサイトはにわかに増加したSEO業者によって施策が行われているため、アルゴリズムが調整されるたびに検索結果の順位が激しく変動するなど、想定していた効果が出ているのかどうかは未知数です。
すっかり前置きが長くなってしまいましたが、すでに誰もが知っているとおり、現在のSEOでは「被リンクの獲得」が至上命題です。もちろん、インデクサビリティ(索引づけのしやすさ)を確保するための施策としてWeb標準技術に準拠したサイト制作を行ったり、狙ったターゲットにリーチするためにキーワードを工夫したり、といった施策は今も重要ですが、これらの施策は重要というよりはむしろ基本のようなもので、それ以上を目指すのであれば、リンクを大量に獲得するための施策こそが重要なのであって、現在のSEOではそのためのコンテンツ企画の能力やサイト運営能力などが問われるのです。キーワードの特殊なマークアップのような過去に「SEO業者だけの特殊なノウハウ」として扱われていたものは、僕のサイトなどによる情報公開の結果、「SEO以前にサイト制作の基本的な事項」となったのです。
そして今回、僕がSEOツール群の公開とそれに関するプレスリリースの配信で行ったことは、「リンクされやすいコンテンツの制作と公開」であり、その内容は「オンラインツール」という再訪率の高いコンテンツの制作であり、「ツールの無料公開」というネット社会に受け入れられやすい公開方法であり、「リンクキットの同時配布」という被リンク増加を助ける仕組みであり、「プレスリリース配信」という話題性を一気に加速するための仕掛けです。
この結果起きたことは、プレスリリースの配信から数十分後に発表された「Japan Internet .comによる報道記事」であり、これがニュース配信の提携先であるYahoo! JapanやGoo、Infoseekなどに二次的に配信され、さらにそれをGoogle Newsが拾う、といった形で、大々的に報道されました。その影響はだんだんと広がり、2006年4月21日のはてなブックマークのホットエントリの1位となり、Allabout Japanの特集記事になるなどし、一次的に大量のトラフィックを得ることに成功しました。プレスリリースを発表した4月20日には約14,000ユニークアクセスで約50,000ページビュー、翌日の21日にもほぼ同数のアクセス数を記録しました。これは僕のサイトの通常時の約4倍程度に相当します。その時のAlexaのグラフを再掲しておきます。
単なるPRと考えるなら、これだけでも大きな成果と言えるのかもしれません。しかし、SEOを志向する場合、こうした一時的な成果は感情的に嬉しいものであってもそれ以上のものではなく、むしろその後の二次的な成果こそが問われるのです。その二次的な成果とは、最終的に「どれだけ多くのページから被リンクを得るか」ということであり、これこそが重要なのです。僕は以前「リンク重視のSEOに関する考察」というエントリの中で、「優先的選択」や「適合性」といったネットワーク科学の用語を用いて、「リンクされやすいコンテンツ」の要件を列挙しましたが、現在のSEOでは、こうした「リンクされやすいコンテンツ」の要件を満たしたコンテンツを公開することによって大量の被リンクを集め、SEOキャンペーンを成功に導くようなことを行います。ここで重要なことは、技術的なスキルは当然として、マーケティングスキルやアイデア、そしてアイデアを実現する能力です。以下に、以前のエントリの中で挙げた「リンクされやすいコンテンツ」の要件を再掲します。
- 見つけやすい
- これはロボットからもユーザーからも見つけやすい状態を作り出す、ということで、具体的な例としては「大手ディレクトリへの登録」があります。大手ディレクトリに掲載されれば、少なくともロボットがあなたのサイトを発見することについては飛躍的に容易になります。またその結果、ユーザーがディレクトリやサーチを使用してあなたのサイトを見つける確率も上がるでしょう。
- 熱中しやすい
- これは新しく訪問してきたユーザーを繋ぎ止めやすい状態を作り出す、ということです。頻繁にアップデートされ、訪問者を飽きさせない、ということであったり、ゲームのような滞在時間の長いコンテンツが充実していたり、掲示板やチャットなどの再訪問率の高いコンテンツがある、といったようなものを指します。ここでユーザーを繋ぎ止めることに成功すれば、いずれ多くのリンクを受けることになるでしょう。
- リンクしやすい
- これは競合する他のサイトよりも、あなたのサイトにリンクすることが容易である、ということです。具体的な例としては、バナーなどのリンクキットが用意されていたり、相互リンクのためのフォームが用意されていたり、といったことや、またはサイト内の個々のページがテーマごとに整理され、資料的参照を行いやすいような構成になっている場合もこれにあたります。後者の例としては、一ページで一語を扱うような用語解説集や、一ページで一商品を扱うような商品説明ページなどがこれにあたります。
- リンクしたくなる
- 便利なツール、有益な資料、面白い読み物、ユーモアあふれる写真や動画、といった優れたコンテンツは、リンクしたい、紹介したい、という欲求をかき立てます。そのリンクしたい、紹介したい、という気持ちを競合する他のサイトよりも強く起こさせるようなコンテンツを準備しておけば、自然にリンクは集まります。
さて、今書いているエントリのタイトルは「2.0時代のSEOは[釣り]と[煽り]」としていますが、この長文をここまで読んできていただいた方になら、僕の言わんとするところはすでに伝わっているかと思います。つまり、Web 2.0時代のSEOは「閲覧者を巻き込み、話題を提供し、被リンクを得ること」であり、これはベタな言い方をすれば「釣り」や「煽り」のようなものだと思うのです。人々が興味を持ち、釣られやすいネタを提供し、釣られた人々の間で賛成や反対などの議論を引き起こし、さらにそれを煽り、結果として大量の被リンクを獲得する、というものです。
この手法は、すでにアルファブロガーなどと呼ばれる人々によって実行されており、単なるトラフィック誘導や被リンクの獲得だけにとどまらない成果(例えば梅田さんの「ウェブ進化論」のベストセラー化など)を上げる例もあります。「ネタ」とか「釣り」とか「煽り」とかいう言い方が適切でないなら、「Buzzマーケティング
」や「クチコミ・マーケティング
」と読み替えてもよいでしょう。いずれにしても、Tim O’Reillyが「What is Web 2.0」の中でSEOを2.0の側に分類したのは、僕がここまで書いてきたような「釣り」や「煽り」といった双方向のコミュニケーションこそが現在のSEOの要点であることを示しているのだと思います。以下に、O’ReillyによるWeb 2.0と1.0の分類表を転載します。
In our initial brainstorming, we formulated our sense of Web 2.0 by example:
Web 1.0 Web 2.0 DoubleClick –> Google AdSense Ofoto –> Flickr Akamai –> BitTorrent mp3.com –> Napster Britannica Online –> Wikipedia personal websites –> blogging evite –> upcoming.org and EVDB domain name speculation –> search engine optimization page views –> cost per click screen scraping –> web services publishing –> participation content management systems –> wikis directories (taxonomy) –> tagging (”folksonomy”) stickiness –> syndication O’Reilly — What is Web 2.0・強調は住太陽による
従来からのチマチマした小手先のSEOテクニックを「SEO 1.0」とするなら、釣りと煽りによって広範囲から被リンクを獲得するSEOはさしずめ「SEO 2.0」といったところでしょうか。1.0 と2.0の違いは、施策を行う際のターゲットであり、1.0では検索エンジンをターゲットに、検索エンジンのアルゴリズムに対して最適化されたドキュメントやサイトの制作を行いました。しかし、検索エンジンのアルゴリズムの進化によって、1.0的なSEOはその効果を急速に失っていっているのが現状です。そしてSEO 2.0では、ウェブ上のニュースサイトやブロガーなどの「ウェブ上での情報発信者」をターゲットに、彼らが「釣れ」そうな「ネタ」を投下することで彼らの情報発信を「煽り」、被リンクを獲得します。これが結果として、検索エンジンに評価される、というわけです。1.0 とか 2.0 とか、言ってるだけでも少々恥ずかしいですが、僕が考えているのはこんなところです。
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