色彩の機能性をデザインする

Webサイトに限定して考えたとしても、色彩が持つ機能には様々なものがあります。そのほとんどは、可読性を高めたり、情報のまとまりを明示的にしたり、印象をコントロールしたり、といった具合で、情報の伝達をスムーズに、効果的にするといったものです。デザインの重要な役割の一つに「情報をデザインし使い勝手を向上させる」というものがありますが、それがWebデザインであれば色彩やが担う部分の大きさは測りしれません。「配色を行う」ということは、文章などのコンテンツや、操作系統などの機能性や、印象などのマーケティング・メッセージといった「情報」をデザインすることの延長線上にあるのです。

配色について学ぼうとすると、そこで語られることの多くは「いかに美しく配色するか」といったことに終始していたりして、残念ながら機能性という意味では、その議論ではもの足りません。さらに一歩進めて「その配色でどのような印象を伝えるか」というところに踏み込んでいたとしても、それだけを考えた場合、同じような業種業態であれば同じような配色を用いる、というような結果になってしまいます。例えばパチンコ店のチラシなどは、原色を多用した派手な配色をすることで、確かに景気が良さそうで活気のある雰囲気を出すことには成功していますが、残念ながら一目見てそれがどの店のチラシであるかを判別するのは非常に困難です。これでは戦略的な配色ができているとは言えません

効果的に伝えるWeb配色標準デザインガイド—ユーザビリティ/アクセシビリティ/マーケティングを考慮したサイトの色彩設計からの配色の実際まで可読性や情報の分類や印象といった情報の伝達を効果的なものにし、同時に美しさを保つだけでなく、差別化を含めた色彩戦略にまで踏み込んだ書籍があります。「効果的に伝えるWeb配色標準デザインガイド—ユーザビリティ/アクセシビリティ/マーケティングを考慮したサイトの色彩設計からの配色の実際まで」(坂本邦夫著)です。この本の著者の坂本さんは、僕の友人であり仕事仲間でもあります。さらに、巻頭の「はじめに」のところに僕個人にへの謝辞があったり、巻末の奥付には制作協力として僕が経営する会社の名前(旧社名)が入っていたりと、この本をここで紹介するのは少し手前味噌な感じもしなくもありません。

しかし本書では、美しさと情報伝達のための機能を持った配色という基礎をふまえた上で、さらに「差別化」という課題にもチャレンジしています。この意味で、たいへん希少な配色の本、ということになると思うのです。例えば、システム開発会社のサイトを配色する場合の例が出ていますが、競合サイトを調査してみると、青色などの寒色系の色をメインカラーに使って配色してあるサイトが非常に多いことに気付きます。青色などの寒色系の色は、信頼感や安定感といったイメージにつながるため、色彩心理学的には正解です。ここまでは、従来からあったような配色や色彩設計のセオリー通りに多くのサイトが配色を行っていることが証明されただけです。

しかし、だからといって、他のサイトと同じような色彩で安易に配色した場合、マーケティング的には「他と似たり寄ったりで印象に残らない」という重大な欠点を生じます。そこで本書では、伝えたいイメージを守りながらも、色彩においても他と差別化し、印象に残りやすい配色を行っていくのです。これはセンスの問題ではなく、調査と理論がもたらすものであり、考え方と手順さえマスターすれば、誰でも確実に同様の配色を行うことができます。

実際には、色彩設計やカラーマーケティングといった考え方や手法は難しいものですが、本書ではそれらをわかりやすく、かつ実践的に解説しています。従来の配色手法で成果が上がらなかったデザイナーや、色彩に関する新しい知識を求める人にとっては、たいへんな良書でしょう。「効果的に伝えるWeb配色標準デザインガイド—ユーザビリティ/アクセシビリティ/マーケティングを考慮したサイトの色彩設計からの配色の実際まで」(坂本邦夫著)。おすすめです。