スパマーと検索エンジンが演じるイタチごっこの構図

最近では PageRank下降問題や有料リンク問題で話題になっているスパマーと検索エンジンの攻防。 これはいわば、スパマーと検索エンジンのイタチごっこのようなものですが、この歴史はインターネット上に検索エンジンと呼ばれるものが生まれて以来、途切れることなく続いています。しかし、十数年に及ぶ攻防の歴史を見ていくと、ある確かな「スパマーと検索エンジンが演じるイタチごっこの構図」が見えてきます。このエントリでは、この構図について簡潔にまとめてみたいと思います。

というのも、今朝付けのCNET Japanの記事「グーグル PageRank下降はペナルティか–検索エンジンを惑わせる有料リンク」で、PageRank下降問題や有料リンク問題について扱われており、僕も編集部の鳴海さんからインタビューを受けて協力したのですが、このエントリは、その内容に対する補足、といった位置づけです。

検索エンジン側がユーザーニーズに即した検索結果を提供しようと考えているのに対し、スパマー側は、どんな手段を講じてでも検索エンジンからトラフィックを呼び込みたいと考えています。いずれも己の事業のためのことですから、一歩も引けません。スパマーと検索エンジンの攻防は、検索エンジンがトラフィックを生むものである限り、つまり検索エンジンが人々に利用されている限り終わりません。

スパマーと検索エンジンの攻防の基本的な構造は、およそ次のようなものです。

  1. 検索エンジンのアルゴリズムの未熟なポイントをスパマーが突き、検索結果を操作する
  2. 検索エンジンはそれに対処する形でアルゴリズムを微調整する
  3. スパマーのやり口が巧妙化する
  4. 検索エンジンはまったく新しいアルゴリズムを導入することで、過去のスパム行為のほとんどを無効にする
  5. 上記 1〜4 を繰り返す

例えば、1996年から1998年頃までスパムの主流近くに位置していた「メタタグを使ったスパム行為」の場合では、スパマーと検索エンジンの攻防は次のような過程を辿りました。

  1. スパマーはメタタグにありとあらゆるキーワードを詰め込み、ページと無関係なキーワードで検索結果の上位に表示されるようなページを作成した
  2. 検索エンジンはメタタグを評価するアルゴリズムを微調整し、本文中に出現しないキーワードを無視したり、キーワードが大量に詰め込まれている場合にはその大半を無視するなどして、スパマーに対抗した
  3. スパマーはメタタグに詰め込むキーワードを減らし、従来の1つのページで大量のキーワードに対応するというスタイルから、1つのページでは1つのキーワードだけをピンポイントで狙い、ページを大量に生成することでキーワード数をカバーするというスタイルへと手口を変化させた
  4. 検索エンジンは、リンクポピュラリティ(PageRank)やアンカーテキスト連関など、ページ外部の要因に重点を置いた新しいアルゴリズムを投入し、検索結果の順位の決定要素としてそれらの新しいアルゴリズムの重要性を高めることで、メタタグの重要性を一気に引き下げ、メタタグに関するスパム行為をすべて無効化した

リンクポピュラリティや、そこから派生的に生まれた各種のアルゴリズムの影響で、ページ内部の要因が検索結果の順位に及ぼす影響は限りなく低くなり、代わりにページ外部の要因(リンクポピュラリティやアンカーテキスト連関など)の重要度が向上していきました。メタタグや、隠しテキストや、ページ内のキーワード出現頻度などのような「ページ内部の要因」は、検索結果の順位を高める上で重要なものではなくなり、外部の要因が重要になってきたのです。

その結果、今日のような、PageRankペナルティ問題や有料リンク問題などが生まれてきたのです。そして、そう遠くない将来、この流れについても、新しいアルゴリズムの導入によってリンクスパムは効力を失うでしょう。この点についても、説明してきたような4段階にまとめることが可能です。

  1. スパマーは被リンクによる評価を高めるために、リンクファームに参加したり、金銭を支払うことでリンクを買い付けたり、被リンクを生成するツール(アクセス解析など)を配布したりした
  2. 検索エンジンは、リンク構造を解析してリンクファームを見破ったり、ページのコンテクストを解析して無関係なリンクを無効化したり、有料リンク(とみられる)リンクを販売するサイトのPageRank価値を下げるなど、アルゴリズムに微調整を施した
  3. スパマーは、リンクスパムや有料リンクを巧妙化させ、検索エンジンを騙し続ける
  4. 検索エンジンは、従来のリンクポピュラリティやその亜種のアルゴリズムの重要度を下げ、代わりに、ユーザーそれぞれの過去の検索履歴や行動履歴をもとにしたパーソナライズを施したり(Google)、ユーザーと他のユーザーの社会的な結びつきを検索結果に反映させるソーシャルサーチ(Yahoo)を導入するなどして、個々のユーザーそれぞれに異なる検索結果を見せることによって、リンクスパムや有料リンクを無効化する

Googleのパーソナライズド検索や、Yahoo!のソーシャル検索の可能性については、過去にエントリ「検索のパーソナライズでSEOは過去のものになる」で触れています。いずれにしても、これらの試みが成功すれば、被リンクによる評価は相対的に価値を低下させ、リンクスパムや有料リンクを「割の合わないもの」に押しやる(現在のメタタグのように)ことが可能でしょう。そして、その時期はそう遠くない将来訪れると僕は考えています。

ただ、それでスパマーと検索エンジンの攻防が終焉を迎えるというわけではなく、スパマーはほどなく、パーソナライズド検索やソーシャル検索をハックする新たなトリックを見つけるでしょうし、検索エンジンはそれに対応を余儀なくされるでしょう。スパマーと検索エンジンのイタチごっこは、これからも延々と、このエントリで示した同じ構図のままで、続いていくのです。

さて、ここまで書いてきて、賢明な読者の皆さんは気付いたはずです。「こんなイタチごっこをいつまでも続けていたって、何の価値も生み出さない」ということに。検索エンジンは常に、検索者にとって価値のある情報を届けようとしています。その立場に立つなら、僕たちは「検索者にとって価値のある情報を発信する」ことが、検索エンジンでの露出を高めるための最も賢いやり方なのであり、イタチごっこに没頭しているのは時間の無駄です。

僕がこのエントリで「スパマー」と表現したのは、普通のSEOのことです。SEOは価値を生み出さない。時間や能力や予算などのリソースは無限ではありません。その限られたリソースを最大に活用としようとするなら、SEOのような何の価値も生み出さないことにリソースを割くのではなく、ユーザーにとって何らかの価値のある情報を発信していくべきです。そうすれば、より賢くなった検索エンジンは、その情報を検索者へと伝えてくれるでしょう。

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1件のトラックバック

  1. LEGGODT.COM より:

    SEO自体は否定しないけど

    いわゆる技術的なSEOには正直、まったく興味がない。 検索エンジンの裏をついた…