ここ数年、クライアントに対する僕の仕事とというのは、SMOのために「よりよいブログを書いてもらう」こと、またはそのためのコンサルティングに終始しているような感があります。ではその、よりよいブログ(ここでいうブログとはいわゆる「企業ブログ」を指しています)とはどんなものか。少しまとめてみましょう。
- クライアントの仕事に関係するより多くの人に読まれるブログ
- 未知の人々、特に潜在顧客に新しい情報を提供するブログ
- ステークホルダーとの間に親近感を醸成しそれを維持するブログ
- 仕事に関連した新しい出会いがもたらされるようなブログ
- 各所で話題になるようなクチコミの起点となるようなブログ
- 1〜5の結果として被リンクが集まるブログ
- 1〜6の結果として売り上げに貢献するブログ
しかし、僕たちコンサルがどんなに熱心に指導したところで、そう簡単によりよいブログを書いてもらえるわけでもなければ、それを続けてもらえるわけでもありません。そして「失敗する理由」のあれこれなんて、挙げ始めたらきりがないほど多く、それらのすべてを矯正するのは現実的ではありません。
しかし、ただ一つ、ブログに失敗するクライアント、なかでも新しくブログを始めて失敗するクライアントに共通していることはあります。それは、彼らのほとんどが他のブログを読んでいない、ということです。
ブログを書くなら、その前にブログを読む習慣をつけなくてはなりません。これは言い換えると、クライアントにブログを始めてもらいたいと考えているWeb業者は、まずはクライアントにブログを読んでもらうことから始める必要がある、ということです。
ブログ以外のどんな表現でも、これから何か表現しようと自発的に考える人というのは、たいていはすでに優れた表現に数多く接しています。つまり、表現者であろうとする人は、表現者である以前に優れた鑑賞者なのです。このステップを間違えると、表現で成果を上げることは極めて難しくなります。
- すぐれた書き手は、同時に優れた読み手でもある
- よい話し手は、常によい聞き手であもる
- 僕たちは子供の頃、言葉を覚えるためにはまず、大人が話している言葉を聞くことから始め、自分で話してみることでそれを自分のものにした
- 詩を読むことなしに、詩の作法を覚えることはできない
- 小説を読むことなしに、小説の文法を知ることはできない
- 一流のプロスポーツ選手の動きを見ることなくして、自分がその分野のプロスポーツ選手になることはできない
- 優れた音楽を聴くことなくして、優れた音楽家にはなれない
- 優れたダンスを見ることなくして、優れたダンサーになることはできない
ここで僕が言いたいことは、インプットなしにアウトプットはできない、というただこの一点のみです。ここで僕がインプットというのは、ただ詰め込む、ということを指しているのではありません。例えばブログにおいては、インプットというのは次のようなことについての学習を指しています。
- 漠然とした考えや感覚や感想を、自分の言葉を使って言語化する方法を学ぶ
- 疑問の発生から結論までの思考の流れを、ブログ向きの短い文章で再構成し、表現する方法を学ぶ
- 構成を工夫して意見により強い説得力を持たせる方法を学ぶ
- ブログを読む人、書く人の間で流れている暗黙の了解事(ブログの文化ともブログの文法とも言い換えられる)を身体化する
こうしたことは、まずブログを読む習慣があり、その上でブログを書く、というようなことをしていない限り、そうそう身につくものではありません。他の優れたブログを読みながら、言語化の手法、構成、鋭いテーマ、感銘を受けた論説、などを自分のものにしていくと同時に、自分ならこう書く、といったシミュレーションを繰り返して、身につけていくものなのです。
ところが、とりわけ企業ブログと呼ばれるジャンルのブログについては、ほとんど(またはまったく)ほかのブログを読んだことのないような人がブログ執筆に挑戦するケースが目立ちます。よくわからないけどウチもやってみるか、というような態度では、ブログがうまくいくはずがありません。
ブログを読む習慣すらないような人がブログを書くなんて、ろくに音楽も聴いたことのないような人がいきなり作曲に挑戦するようなものです。ありていにいって、うまくいくはずがありません。優れたブログを書くためには、習慣的に優れたブログを読む必要があるのです。
しかし、ここで問題が一つ発生します。優れたブログ、読むべきブログ、楽しんで読めて参考になるブログ、といったものを見つけるのが難しい、という問題です。
もっとも、仕事がIT関係なら、学ぶべき点の多い優れたブログを探すことはそう難しいことではありません。なにしろそのジャンルでは、ブログの数自体が極めて多いからです。しかし、自分の仕事(またはクライアントの仕事)が大工だったらどうか。漁師だったらどうか。八百屋だったらどうか。話は少し難しくなります。
そこで、読むべきブログのリストを作る簡単な方法を紹介して、このエントリを終わろうと思います。この方法はたったの3段階で、いずれもそんなに難しいものではありません。
- 自社の業務に関連するキーワードのリストを作る
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- まず、メモ帳なりなんなりのテキストエディタを開いて、業務に関連していそうなキーワードを思いつく限りリストアップします(キーワードごとに改行しながら)
- このとき、自分の視点からキーワードを選ぶだけでなく、取引先の視点、消費者の視点、競合他社の視点、付き合いのある各種の専門家の視点など、ありとあらゆる視点から、業務に関連していそうなキーワードをリストアップしてください
- 次に、それらのキーワードのリストをGoogle AdWords キーワードツールに入力して関連語句を取得し、さらに長大なキーワードのリストを作成します
- 読者数が多く、かつ上記のキーワードを扱うブログを探す
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- 読むべきブログを探す際には、ブログ検索のTechnorati(テクノラティ)を使います。テクノラティは巡回範囲も広くないうえに遅くてイライラしますが、有力なブログを探すのにはとても重宝します
- テクノラティの検索窓に、先に作ったキーワードを一つずつ入力して検索します。テクノラティの検索オプションには「オーソリティ」という項目があり、これは一定期間にそのブログがほかのブログから言及(リンク)を受けた数の大小で、検索結果に表示させるブログをフィルタリングする機能です。これを「全部」から「☆」(星一つ)に変更しておくと、極端に読者の少ないブログは除外されますので、より読者の多い(つまり有力な)ブログを見つけやすくなります
- どんどん検索し、面白そうなブログがみつかったら、どんどんリストアップしていきます。この時点では、ピックアップする量を増やすことに専念してください。内容に応じて絞り込む作業はあとからできます
- それらのブログをRSSリーダーに登録する
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- ブログを効率的に購読するには、RSSリーダーを使います。RSSリーダーは、Internet Explorer や Firefox、Safari などの標準的なブラウザにはブラウザの機能として組み込まれているほか、Web上で使用するものもあります。多くの人に使われており、おすすめなのは、Googleリーダー と livedoor Reader です。これらはアカウントを登録すれば無料で利用できます
- Googleリーダーや livedoor Readerを使う場合、ブラウザのホームページ(ブラウザを起動したら最初に表示されるページ)にそれらを登録しておくと、ブログ購読をより習慣化しやすくなります。
- あとは、RSSリーダーに登録したブログを購読し、そこでおすすめされていたブログをさらにRSSリーダーに登録したり、期待はずれだったブログをRSSリーダーから削除したり、といったことを繰り返していけば、自分に合ったよいブログだけが残っていきます
事業の一環としてブログを活用する、というようなことが言われはじめてから、もう5年以上が経過していますし、個人のブログ利用者人口も十分に増えました。しかし、事業の一環として成功していると思われるブログのほとんどが、いまだにIT系(しかもフリーランスやベンチャーばかりが目立つ)に偏っているというのは、あまりにももったいない話です。
企業ブログは過去にやってみたけれどうまくいかなかった、とか、これから企業ブログをはじめたいが、最初のところでつまずいてしまう、という場合、おそらく、御社に足りないのは「ブログを読み、ブログを通じた情報の流れを体感し、ブログの文化に馴染む」ということです。まずは読むことから、はじめてみませんか。
また、クライアントが思うようにブログを活用してくれない、という制作業者やマーケターの方。 もしかしたらあなたのクライアントは、自分のブログを書く以前に、誰か他の人のブログを読む習慣がないのかもしれません。他の誰か(とくに競合他社)がブログを役に立てているのを目にすれば、モチベーションは変化します。まずは読んでもらう、というところからはじめてみませんか。
