おかしな読者観を持った企業ブログたち

僕は前回のエントリにも書いたとおり、セールス目的で企業ブログを運営することに対して大きな疑問を持っています。自己宣伝や自画自賛で塗り固められたブログを見ることに価値を見いだせない、というのがその理由。

しかし世の中には、セールス目的のブログを推奨する人々がいて、それに従ってセールス目的のブログを運用する人たちがいます。しかも、この種のブログは人目に触れにくいだけで相当な数があり、企業ブログはかなりの割合でこんなのなんじゃないかと思うくらい。これは一体どういうことか。

そこで思い当たったのが、セールス的なブログを志向する人というのは、そもそもブログの読者に対する捉え方が根本からおかしいのではないか、ということです。おかしい、というのは言い過ぎだとしても、普通のブログを運営している人とは根本的に違った読者観をもっているのではないか、と。

もっとぶっちゃけていえば、セールス的なブログを志向する人には「固定のブログ読者」というものを想像することすらできていないのではないか、ということです。

通常なら、ブログの読者というのは、そのブログを気に入ってくれて、定期的に見に来てくれる人のことを言うものだと思います。例えばRSSリーダーに登録してくれている人などはまさにその典型です。ありがたいですよね。

ところが、セールス的なブログを運営する企業というのは、ブログ読者を、固定読者などではなく、もっと一見さんに近いものとして捉えているのではないか。「読者」というよりは「たまたまアクセスしてきた人」。

たまたま間違えて検索エンジンやランキングサイトなどからアクセスしてきた人たち、つまりもう二度と訪問してこないような人たちを読者として想定しているのなら、その中でセールスに引っかかる人の割合を上げようと躍起になるのは、ある意味自然なことかもしれません。

どうしてそんな読者観を持ってしまうのか。考えられる理由は次のようなものです。

  1. 自分自身がどんなブログも購読していないために、決まったブログに定期的に訪問するようなことを想像できない
  2. 自分の観測範囲にあるブログ(例えば同じ勉強会に所属する他のメンバーのブログとか)がすべてセールス目的であり、そこではブログへのアクセスは何かの間違いの結果起きるものという共通認識ができている
  3. セールス的なブログの集客は検索エンジンとランキングサイトに大きく依存しており、それらの集客手法で訪問してくる人というのはどうしても一見さんで二度とこない人の割合が高くなる。そしてそれを普通のことだと思ってしまう
  4. 訪問者は一種の金蔓であり、訪問者が馬鹿で騙されやすい人であればあるほど、セールスが効果を発揮し儲かると考えている

こういう読者観で運営されているブログは、気持ちのいいものではありませんが、なぜそれが気持ち悪いのかといえば、そこにその企業の考え方なり体質なりといったものが反映されているように思えるからです。

普通に考えて、固定客よりも一見客を重視する、もっと言えば固定客ができないために常に新規の一見客を必要としている、というような企業が信頼されるはずはありません。信頼されるのは、固定客に愛されている企業です。ひるがえって、一見客に何とか自社商品を売り込もうとするような企業ブログを運営することは、自らの企業体質が信頼に足るものではないことを自ら喧伝しているようなものです。

もっとも、いままさに僕のブログを読んでくれている人というのは、他の普通に運営されていて成功しているブログもたくさん読んでいるでしょうし、ここまで述べてきたようなことが当てはまる人ようなはただの一人もいないと思います。ですから、ここでこんなことを言っていること自体にはあまり意味はありません。

しかし、この話題の中であらためて確認しておきたいことがあります。それは、読者の一人一人を意志も感情も知性も持った存在であると認識し、一人一人の読者に対する尊敬する気持ち(感謝する気持ちでもいいし謙虚な気持ちでもいい)を忘れないようにしたい、ということです。つまりは正常な読者観を持つ、ということ。

まあこんなこと、普通にしてたら忘れるはずもないことなんですが、調査のためにある業界の企業ブログを見て回っていて、ちょっと混乱してきたんですよね。ブログを単なる宣伝ツールだと思って読者不在のままセールストークを垂れ流しているような会社があまりにもたくさんある、という事実を前にして。

なんにせよ、読者に寄り添う気持ちを忘れたら企業ブログなんて意味がない、ということを再確認して、このエントリを終えることにします。